2010 Fiscal Year Annual Research Report
ロシア進出前後の中央アジア社会に関する歴史地域学の試み
Project/Area Number |
22720263
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
塩谷 哲史 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 準研究員 (30570197)
|
Keywords | 中央ユーラシア史 / ヒヴァ・ハン国 |
Research Abstract |
本年度は2度にわたり、ウズベキスタン共和国中央国立文書館、ロシア国立歴史文書館において露亜銀行および帝政ロシアのトルキスタン統治、対ヒヴァ・ハン国関係にかかる文書史料を、またロシア国民図書館においてトルキスタンおよびアムダリヤ下流城における灌漑事業に関する文書および公刊史料を閲覧、複写した。これらの史料の分析を進めた結果、20世紀初頭に露亜銀行の融資によって進められたアムダリヤ下流城・ホラズム地方の灌漑事業の全容、およびロシア政府(中央政府およびトルキスタン総督府)の対応の諸相が明らかになってきた。また、ウズベキスタシ共和国・ヒヴァ市に所在するイチャン・カラ博物館のカーミルジャン・フダーイベルガノフ氏とユースポフ『歴史』写本の公刊に向けた研究打ち合わせを行った。 成果の公表については、1910年代ロシアとヒヴァ・ハン国との間で議論されたアムダリヤの水利権問題に関する専論を投稿し、現在査読中である。また、この問題の前史ともなる19世紀前半のヒヴァ・ハン国における政治権力と灌漑との関係については、Irrigation Policy of the Khanate of Khiva regarding the Lawzan Canal (1),1830-1873を『筑波大学地域研究』32号に投稿し掲載が予定されている。さらに、、アムダリヤ流域の水利用を現在に至るまでの史的文脈に位置づけるべく、筑波大学で開催された国際ラウンドテーブル「市民社会と環境問題」において、「アラル海問題の歴史的淵源」と題する報告(英語)を行った。全般として、19世紀から20世紀初頭のアムダリヤ下流域に位置するホラズム地方における政治権力と灌漑との結びつきが、帝政ロシアによる保護国化によりいかなる変容をこうむったのか、という点について、一貫した叙述を行える方向性が見えてきた。
|
Research Products
(4 results)