2010 Fiscal Year Annual Research Report
10?13世紀ユーラシア東方における外交儀礼と国際秩序
Project/Area Number |
22720267
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
古松 崇志 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (90314278)
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Keywords | 契丹 / 宋朝 / 外交儀礼 / 〓淵の盟 / 喪葬儀礼 / 『遼史』 |
Research Abstract |
本研究は、11世紀から12世紀にかけて契丹・宋間で相互派遣された国信使の外交儀礼制度を中核にすえながらも、その起源と後代への影響についても視野に入れ、外交儀礼の変容を王朝断代を越えて考察するものであるので、ひろく前代の唐代から13世紀のモンゴル時代登場までの本研究の遂行に必要な関連史料を網羅的に収集した。 本研究にかかわり、5月には中華民国台北市へ出張し、中央研究院歴史語言研究所傅斯年図書館、国家図書館において関連する文献を調査・収集し、故宮博物院で契丹の考古資料の展示を参観した。また、前者では契丹仏教史にかかわる石刻拓本の閲覧・調査も同時におこなった。8月にはモンゴル国へ出張し、オルホン河流域の突厥・モンゴル時代の遺跡の調査とともに、契丹時代モンゴル高原進出の拠点であったと推測されているチン・トルゴイ城址などの契丹遺跡の調査をおこない、契丹の西北経営にかんする知見を深めた。 そのほか、本研究と関連して、〓淵の盟より後の、11~12世紀契丹皇帝の喪葬儀礼の研究をおこなった。『遼史』礼志にみえる喪葬儀礼の記述についての文献研究をすすめて儀礼の手順を復元し、同時に前代唐代の皇帝喪葬儀礼の儀注や、契丹王族墓から発見された考古資料、突厥やモンゴルなど前後する時代の中央ユーラシア遊牧民の喪葬風俗にかんする文献など多様な時代・性質の史資料と比較検討をおこなった。その結果、漢文文献の記述にみえるタームなどから唐風の喪葬を模倣して取り入れているようにみえながら、実際には唐代の儒教の礼制にもとづく喪葬とは大きく異なって、古くからの狩猟遊牧民としての風習を守り続けていたという、契丹の喪葬儀礼の特質が明らかとなった.その他の祭祀儀礼の特徴も含めて考えれば、契丹国家中枢の契丹人は最後までけっして漢化することはなく、みずからの「契丹」としての自己同一性を強く保持し続けていたのである。
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