2011 Fiscal Year Annual Research Report
毛沢東期における中国共産党の支配の正当性論理と社会
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22720269
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
三品 英憲 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (60511300)
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Keywords | 中国近現代史 / 中国共産党史 / 中華人民共和国史 / 中国社会論 / 東洋史 / 中国近代史 / 中国現代史 / 中国農村社会 |
Research Abstract |
平成23年度は、1.中国共産党上層部の指導者たちの言論の解析、2.中国共産党支配下の社会における秩序と価値観の生成過程の分析、3.1920~40年代の中国共産党に関する台湾所蔵資料の目録作成とその公開、の3点においてそれぞれ顕著な成果を上げることができた。 1.については、支配の正当性に関する毛沢東の言説を分析するところから、彼が「現実とは何か」の解釈権を独占していたこと、そしてそうした言説に基づく支配は、伝統的に「公・私」の区別が曖昧であった中国社会のあり方と一定の対応関係にあることを指摘した論考「党・国家体制と中国の社会構造」を発表した。この論考は、以上のような歴史学的知見を踏まえて、現在の人民共和国における「議会」の可能性についても言及しており、歴史学と現状分析をつなぐ上で重要な意義をもっている。 2.については、1945年~49年の中国共産党支配地域において農村革命工作に従事していた党員が書いた報告書に基づき、当該社会において「群衆は正しい」という言説が社会に受容されていったこと、そしてそうした社会の中で「群衆とは誰か」を決めていたのが共産党であったということを指摘する研究発表を、全国的な学会の年次大会において行った。この研究発表は、「世界史認識と東アジア」と題するシンポジウムの中で行ったものであり、本報告を素材として日本史など他の地域の歴史研究者との間で活発な議論が展開された。 3.については、台湾(中華民国)法務部調査局が所蔵する1940年代末までの共産党関係資料の一覧を作成し、日本の学術誌に発表して成果を社会的に還元した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度から2年間の研究によって、これまでに論文4本を発表し、全国的な学会において2回報告した。これらの研究成果は、毛沢東期における中国共産党の支配の構造的特質について、社会・共産党・毛沢東という三層において捉えるとした本研究の課題に対し、その三層の全てを網羅するものである。よって「おおむね順調に進展している」と評価してよいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、今後、国共内戦期(1946年~49年)の共産党支配地域において、共産党がどのように新しい社会秩序を形成していったのかという問題を追究する。この分析では台湾所蔵の資料を用いる予定であるが、この資料についてはすでに何度もアクセスしており、特別の困難はないものと予想している。ただしこの資料は、当該時期に農村革命工作に従事した共産党の工作隊が、党内で情報を共有するために作成したパンフレットが中心であり、印刷状況・保存状況ともに劣悪である。したがって解読に時間がかかることが予想されるが、本研究は、どのような言葉がどういった文脈で使用されているかを考察の手掛かりとするものであり、丁寧に読み解いていくほかない。
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