2011 Fiscal Year Annual Research Report
出土資料・石刻史料の分析によるモンゴル帝国時代華北多元社会の展開の解明
Project/Area Number |
22720270
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
舩田 善之 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 講師 (50404041)
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Keywords | モンゴル帝国 / 華北 / 出土資料 / 石刻史料 / 碑刻 / 多元社会 / 山西 / 山東 |
Research Abstract |
本研究の第二年度にあたる本年度は、文献史料の収集・整理・分析及び現地調査に重点をおいた。地方志・石刻史料集及び関連の史料・研究書を購入し、研究環境を整備し、これらと既収集史料の整理・読解を行った。本年度の現地調査の対象となる中国山西省陽城・沁水・高平・晋城及び河南省新鄭の史料情報の収集整理を進めつつ、山東省牟平、河南省林州、山西省ゼイ城、陳西省銅川・西安などの石刻史料・出土資料の分析を行った。 現地調査では、調査に先立ち、現地における石刻史料の状況について、山西大学の張俊峰副教授から有用な情報と便宜の提供を受けたことにより、多くの寺廟において多数の重要な石刻史料を実見調査することができた。 すでに公表した成果の概要は大きく三つに分けられる。 第一に、前年度に引き続き、モンゴル帝国時代華北の多元社会の一端として出現した言語接触に関して議論を深化させ、漢語教材『老乞大』の言語的位置づけを具体的な史料言語に基づいて、モンゴル語直訳体の影響を受けているものの、モンゴル語からモンゴル語直訳体のルールに則って直訳された文献ではないことを論証した。 第二に、本年度までに収集した石刻史料とその関連史料の分析を通じて、モンゴル統治層、華北に赴任・駐屯した統治層~中間層であった官僚・司令官、地域社会における宗教教団・民衆の三者関係を考察した。この一連の成果によって、モンゴル帝国時代華北多元社会におけるいくつかの実態が解明されつつある。 第三に、本研究に深く関わる石刻史料・文書史料に関する総説・研究展望をまとめた。これらは、研究代表者の今後の研究展開のための指針としても位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り必要な図書を購入し、さらに現地調査によって、本課題の実施に不可欠な石刻史料を実見することができ、史資料の収集及びその分析が順調に進んでいるため。また、新史料を用いた研究成果を学会などで報告し、本課題の目的である華北多元社会の解明につながる論文を中国の査読付き学術誌に掲載するなど、成果公表も順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、文献史料の収集と現地調査を継続して行い、本課題の推進に必要な研究基盤を構築し、最終年度(平成25年度)に向けて史資料の解析を進める。また、本研究の成果を華北地域史だけではなく中央ユーラシア史にも大きく位置づけるため、欧米の研究者ともモンゴル帝国史・中央ユーラシア史の最新の潮流と視座について積極的に議論を行う予定である。
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Research Products
(7 results)