2011 Fiscal Year Annual Research Report
唐代中国の文書行政システムの研究―中央アジア出土唐代公文書の古文書学的分析による
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22720271
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤木 崇敏 大阪大学, 文学研究科, 助教 (00566656)
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Keywords | 東洋史 / 唐代史 / 文書行政 / 出土文書 |
Research Abstract |
本研究では、中央アジア出土文書を所蔵する海外研究機関での史料調査と、その調査結果の考察、データベースの作成・分析とを交互に進め、最終的に唐帝国全体の情報ネットワークの再構築とそれを運用した行政機構の構造及び運用原理を解明する。 本年度は、現地情勢を鑑みて当初の海外調査の予定を変更し、東洋文庫において同館が所蔵するロシア科学アカデミー東方学研究所将来漢文文書マイクロフィルムを調査し、未公刊の漢文・チベット語文書を多数収集するとともに、翌年度実施予定の海外調査への準備とした。また、前年度(22年度)の調査成果のまとめとして、唐前半期にコータン地方に設置された覊縻府州・毘沙都督府で使用された唐代官文書、および11世紀陝西地域の宋代官文書に対する考察を、それぞれ『西北出土文献研究』『大阪大学文学研究科紀要』に学術論文として発表した。先行研究ではトゥルファン(西州)や敦燈(沙州)など文書が大量に発見された直轄州が主要な検討対象とされるも、唐周縁部に多数設置された覊縻府州については見落とされがちあった。前者の論文は、その覊縻州における税糧の徴発とそれに関する文書伝達の在り方について検討した。後者では、将来的な唐代と宋元代公文書の比較研究への布石として、カラボト出土の宋代官文書を取り上げ、宋代官文書の書式と機能を整理・検討し、当該文書群の基礎情報を学界に提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、前年度(22年度)の現地調査の結果を学術論文の形で公表し、さらにはこれまでの研究成果を中国語論文としてまとめた。予定していた海外調査は、現地情勢を鑑みてやむを得ず国内調査に切り替えたが、東洋文庫所蔵のサンクトペテルブルク東方学研究所将来漢文文書マイクロフィルムを調査することで、研究課題を遂行する上で充分な数の史料を蒐集することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度たる24年度には、これまでの研究の体系化を図る。唐代文書行政で使用された公文書の書式と機能を全て明らかにするとともに、「中央」と「地方」(直轄州と覊縻府州)とを合わせた唐帝国全体の情報伝達ネットワークのモデルを図式化する。このため、最終年度夏~秋に海外研究機関で史料調査を行う予定である。また、唐代文書行政の在り方や、それを運用した原理や行政機構が、時代を経るにつれどのように変化したか、社会的・制度的背景についても考察する。この成果については、学術論文として発表するほか、特に公文書の書式・機能を概括したハンドブックの刊行を計画している。
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