2011 Fiscal Year Annual Research Report
清朝治下の東トルキスタン・オアシスにおける文書行政と支配構造
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22720272
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
小沼 孝博 東北学院大学, 文学部, 准教授 (30509378)
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Keywords | 東トルキスタン / 新疆 / 清朝 / テュルク / カザフ / コーカンド / 中央アジア / 満洲 |
Research Abstract |
本研究の目的は、清朝治下の東トルキスタン・オアシスにおける文書行政について体系的に検討し、清朝統治の実態解明に取り組むことにある。 平成23年度は、学術論文1件(中国語)を公表した。本論文においては、清朝治下の東トルキスタン・オアシスから北京へ強制移住させられたテュルク系ムスリムの居住区「回子営」の歴史的変遷を文献資料とフィールドワークによって検討したものであり、「回子営」住民がテュルク語文書作成や通訳など、清朝中央における文書行政システムに参画していた点を明らかにした。また、当該年度は国際学会を含め学会発表4件を行った。その中においては、1795年にコーカンド・ハーン国の使臣がカシュガルの清朝大臣とハーキム・ベク、およびヤルカンドのハーキム・ベグに宛てた文書3件を材料として、オアシス・レベルにおける文書行政のあり方を検討し、かつ外交面におけるハーキム・ベクの役割に関して考察を深めることができた。 また、中国(北京・承徳・ウルムチ)・オーストラリア(キャンベラ・シドニー)等に出張し、現地の文書館・博物館で文献調査を実施するとともに、史跡・石碑の調査を行った。北京の中国第一歴史档案館においては、1759-60年の清朝とコーカンド・ハーン国の関係構築時期の状況に関わる満洲語・テュルク語・ペルシア語の文書史料の収集を行った。シドニーのミッチェル図書館では、モリソン・コレクション中の新彊関連史料を閲覧・調査することができた。いずれも従来の研究では十分に利用されてこなかった史料群であり、本研究課題における成果の重要な一部分を構成するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」において、(1)「チャガタイ語行政文書」の事例研究本研究、(2)支配構造の人的構成の復元、(3)文書行政の全体像の解明、という三つの具体的課題を提示した。平成23年度の研究実績は、このうち主に(1)・(3)に関わるものであり、研究期間内における成果達成は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も海外の文書館における史料の調査・収集を行い、データの蓄積と分析を継続する。特に上記の課題(2)に関わる根本史料であり、ヤルカンド・オアシスのベク官人の履歴を網羅した「ヤルカンド大小ベク履歴冊」(満洲語)については、公刊に向けた翻訳とデータの打ち込みを進展させることが取り組むべき具体的作業となる。
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[Presentation] The "Silk Road Controversy" in Japan2012
Author(s)
Onuma Takahiro
Organizer
Australian Centre on China in the World Research Theme Workshop : The Past and Present of Inner Asian Studies-towards defining places, nomenclature and approaches
Place of Presentation
Australian National University, Canberra
Year and Date
2012-03-23
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