2011 Fiscal Year Annual Research Report
衛星写真とスタイン・ヘディン地図を用いた探検隊調査地の解明に関する基礎的研究
Project/Area Number |
22720275
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
西村 陽子 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 研究員 (70455195)
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Keywords | 考古学 / 東洋史 / 地理情報システム |
Research Abstract |
本研究は、20世紀初頭のシルクロード地域を探検したAurel SteinとSven Hedinの地図をデジタル化して解析することで、所在地が不明となっている探検隊の調査対象地点を系統的に解明することを目的とする。Steinらの地図には、作成技術上の制約から地域ごとに異なる誤差が存在する。本計画では、(1)Stein及びHedin地図上の誤差の発生状況を解明する。(2)(1)で判明した地図の誤差情報を用いて地図上に描かれた遺跡の近傍点の誤差を算出し、これに基づいて遺跡の現在位置を推定する。次に現地文物局の研究者と協力し、Steinらが残した遺跡の写真・平面図と現状の照合を行い、これによって20世紀初頭のシルクロード探検隊調査地の全貌解明を目指す。(3)同定成果をデータベース化することで、国内外の研究者と探検隊遺跡の所在データを共有し、シルクロード研究の基礎とする。 平成22年度の研究では、とくにコータン地区の調査を行い、データを揃えにくい砂漠地帯の遺跡同定の事例を積み上げるとともに、その同定結果の検証のための現地調査を行った。その結果、ウェブ上の同定でも遺跡の特徴などを用いてある程度の同定が可能であり、現地調査を重ねることでさらに精度の高いデータが得られることが明らかになった。この成果を受けて、平成23年度は、まず照合結果を公刊するための遺跡データベースの構築に取り組み、システムモジュールの一部として、古地図の誤差を収集するシステム「マッピニング(Mappinning)」を作成し、ウェブ上で公開した。ウェブ上の公開によって多くの研究者と成果を共有することが可能になったため、古地図の誤差収集・遺跡同定の速度と精度の向上が期待できる。次に、「マッピニング(Mappinning)」と対になる遺跡同定データ蓄積ツール「シルクロード遺跡データベース」の構築も開始し、遺跡データベースの設計案を確定した。この設計案に基づいて、平成24年度にデータベースの実装作業を行う予定である。これによって、データ収集・遺跡同定作業を同時進行で行い、同定成果を国内外で直ちに共有し、検討することが可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査は平成22年度に予想以上に進展したが、平成23年度は現地の治安が悪化したため調査は不可能になった。一方で、平成23年度は、データベースの設計・構築が当初想定した以上に進展した。年度ごとに進展が著しい部分は異なるが、全体計画の中では当初の計画に沿って順調に成果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の課題としては、22年度および23年度の成果を受けて、「マッピニング(Mappinning)」を用いてStein地図の誤差データを系統的に収集・解析する。具体的には、平成24年度はクチャ地区を、平成25年度はカラシャール地区を取り上げ、探検隊調査報告と現代報告の照合を行い、現地の研究機関と協力しつつ、現地調査を行うことを計画している。クチャ・カラシャール地区においては、1949年以降、多数のクチャ語史料が出土しているが、それらの新出土史料と過去の調査の関係は未知である。平成23年度中に、現地文物局による新彊ウイグル自治区の遺跡に関する詳細な調査データが刊行されたため、当該地区で現在把握できる遺跡と過去の調査遺跡を同定することで、過去と現在の調査で出土した史料の相互関係を把握することを目指す。日本においては引き続き遺跡データベースの構築を進め、Hedinの地図を整備するとともに、遺跡同定成果を蓄積していく。
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