2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭のイギリスにおけるチャリティ活動の実態的・言説的把握
Project/Area Number |
22720282
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金澤 周作 京都大学, 文学研究科, 准教授 (70337757)
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Keywords | イギリス / チャリティ / 20世紀 / 慈善活動 / 歴史 / 福祉 |
Research Abstract |
放任的な自由主義の19世紀から介入的な国家福祉の20世紀へ移行しつつあったイギリスを対象にして、近世から近代にかけて他国に比しきわめて巨大な実質を備えていた「チャリティ(慈善・公益活動)」が、いかなる変容を被るのか、あるいは被らないのかを歴史学的に究明するという目的の下、本年度は次のような研究をおこなった。 研究計画に基づき、1909年の救貧法委員会の報告書の理解につとめた。まず、J.Harris(1972)やA.M.BcBriar(1987)、そしてB.Harris(2004)といったイギリスの優れた先行研究に学んだ。これらは福祉国家形成の前史を、緻密な実証によって明らかにしたものであるが、主眼は国家福祉の方にあり、旧来のチャリティを含む福祉の諸実践には充分な検討が加えられていない。現代イギリスにおけるチャリティ的なるものの横溢を鑑みるに、20世紀初頭に福祉の未来を賭けて当代の思想家、実践家、政治家たちが知恵の限りを尽くしたと言ってよい救貧法委員会において、これまであまり着目されてこなかったチャリティに関する言説を考察する意義はきわめて大きい。 同報告書の第7部は「チャリティと困窮者救済」(pp.447-526)と題し、伝統的な基金立チャリティと比較的新しい形態である募金立チャリティの概要が述べられた後、国家による規制、救貧法との関係、ドイツとの比較など、多岐にわたる考察が展開されている。報告書全体の中では10パーセントにも満たない分量にすぎないが、福祉の未来は、チャリティの過去を無視したり捨て去ったりすることではなく、それを継承することを前提として構想されていたことが、明らかとなった。
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Research Products
(4 results)