2012 Fiscal Year Annual Research Report
中世盛期西欧における文字実践の展開とその社会的影響
Project/Area Number |
22720283
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松尾 佳代子 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (40551924)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 中世史 / フランス / リテラシー / 教会文化 / ポワチエ / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本年度は過去2年に行ったラテン語資料の分析をもとに、『コンヴェントゥム』の作成目的を明らかにすること、さらにこの文字史料が当時の地域社会に与え得た影響を考察することを主要な課題とした。 まず、分析対象に選んだ四修道院のうち、昨年度の研究でとの関わりが最も強く認められたリモージュのサン・マルシャル修道院をその作成地として仮定して、史料作成のもつ意味を検討した。『コンヴェントゥム』の架空の紛争描写では、その大半がポワトゥとリモージュの境界地域に集中している。リュージニャン城主が勢力拡大のため紛争に明け暮れる一方、ポワチエ伯を軸に伯・副伯らは連携してこれをけん制し、勢力均衡を図っている。現実では、ポワチエ伯との対立の記憶が新しいマルシュ伯家だが、史料内では、同修道院に親しいマルシュ伯ベルナールとポワチエ伯ギョーム5世との間にもたらされた紛争は、結果的にどれも現状維持に落ち着く。さらに、同修道院と対立するリモージュ司教ジェラールが史料内ではリュージニャン城主を援護するなど、『コンヴェントゥム』は伝統的な領主社会への支持を、同修道院に親和的な形で表明している。『コンヴェントゥム』の社会的影響については、俗語史料としての対外的なインパクトに注目した。同史料は有力な巡礼地であったサン・マルシャル修道院において、巡礼者らに口頭で披露された可能性が考えられる。自己に有利な記憶を聖職者や有力領主に加え、社会の下方まで広く流布させることは、間接的に司教・他の修道院に対する優位の確立に役だったであろう。 本研究の成果の公表に関しては、フランス滞在中にL.モレル教授およびF.レネ教授の助言を受けながら、フランス語論文として発表するべく構想を練り、原稿作成を進めた。最終的に年度内の論文公表には至らなかったが、その内容は3月末に再度渡仏した際、モレル教授のセミナーにおいて口頭で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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