2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720290
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田尻 義了 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 学術研究員 (50457420)
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Keywords | 弥生時代 / 青銅器 / 鋳造 / 鋳型 |
Research Abstract |
本研究の目的は弥生時代における青銅器生産の実態を解明することである。なかでも、対象資料をこれまでの研究で取り上げられることの少なかった小型青銅器にしている。これまでの青銅器研究の多くは、大型青銅器を対象として、青銅器が用いられた社会や集団祭祀などの復元に目が向けられ、小型青銅器に関しては関心が払われてこなかった。小型青銅器は出土資料数が多く、鋳造回数からいえば、弥生時代の鋳造行為のほとんどは小型青銅器を製作したといえる。したがって、小型青銅器を含み込んだ青銅器生産の解明を行わなければ、弥生時代の青銅器生産の実態は解明できない。 そこで、本年度の研究活動は小型青銅器の中でも銅鏃の資料集成を実施し、福岡市内出土資料および宮崎県内出土資料の集成を行った。分析を実施するための基礎的作業として、この集成は今後も対象地域を広げながら継続して実施する予定である。さらに、青銅器の鋳造において使用された鋳型資料の原産地推定に関する研究も推進した。弥生時代に使用された石製の鋳型資料を対象として、岩石の顕微鏡観察、蛍光X線分析、資料の生成年代測定を行い、原産地を絞り込むことができた。その成果の一部は、2010年11月に開催された九州考古学会で発表している。弥生時代における使用石材の原産地の解明は、これまで今山石斧や立岩石包丁などが知られていたが、本年度の研究により新たに鋳型石材の原産地も明らかになった。この点は単なる青銅器生産に関する実体解明だけではなく、社会の統合範囲の問題や資源の流通といった当時の弥生社会を復元する上でも極めて重要な成果である。 青銅器生産に関する研究は、製作された製品の研究と製作に使用した鋳造関連遺物の研究の両面から実施しなければならない。本年度はその両面から着実に研究を実施することができた。来年度以降も継続して進めていきたい。
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