2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22720290
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田尻 義了 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 学術研究員 (50457420)
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Keywords | 弥生時代 / 青銅器 / 鋳造 / 鋳型 / 石英斑岩 / LA-ICP-MS / EPMA / 微量元素 |
Research Abstract |
本研究の目的は弥生時代小型青銅器の製作技法を通じて、青銅器生産の実態を解明することである。大型の青銅器は、社会統合の理解や階層化の進展度合いなどの指標に用いられ多くの研究が存在するが、小型青銅器はこれまでの研究動向の中であまり取り上げられることがなく、見逃されがちであった。なかでも小型青銅器の製作技法に関しては、鋳造という行為から考えれば、大型の青銅器であろうと小型の青銅器であろうと全く同じ活動を行っている。したがって、数多く出土する小型青銅器の製作技法の実体解明ことが、弥生時代の青銅器生産の全体像を捉えることが出来る。 そこで、本年度は小型青銅器の中でも銅鏃の集成と巴形銅器の調査、小形〓製鏡の調査を実施し、上記の課題解決を試みた。具体的には九州出土の銅鏃資料の集成を行った。また、巴形銅器に関しては福井県、群馬県での事例を調査している。小形〓製鏡に関しては長崎県の壱岐島出土の資料や、福岡県の筑後平野出土資料、群馬県出土資料などの調査を行った。さらに、昨年度に引き続き、青銅器を鋳造する際に使用する鋳型石材の原産地同定に関する研究も進めた。主要構成鉱物の化学組成分析と対象資料内に副成分鉱物として含まれるモナズ石のU-Th-Pb化学年代測定、波長分散型蛍光X線分析装置(XRF)を用いた主要元素・微量元素の全岩化学分析,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析計(LA-ICP-MS)を用いた微量元素・希土類元素の全岩化学分析、LA-ICP-MSMAEP臥などを用いた全岩化学組成や希土類元素の組成分析、蛍光X線分析等を通じて使用石材の原産地が確定したとともに、石材を加工した遺跡の存在まで追求することが出来た。これらの成果は平成23年度九州考古学会・日本地質学会西日本支部合同大会で発表を行い、また、論文も執筆し受理されている。 青銅器生産の実態解明には、製作された製品の丹念な調査と共に、鋳型資料をはじめとする鋳造関連遺物の分析が重要である。本年度はその両者の研究を着実に進めてわり、来年度以降も継続して推進させていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、弥生時代の青銅器生産に用いた鋳型石材の原産地が同定されるとともに、石材を加工し鋳型の素材を製作した遺跡も発見された。青銅器の製作技法を解明する上で、鋳型研究は最も重要であり、鋳型製作の実態解明に新たな知見を得ることが出来ているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は、製作された製品のさらなる丹念な調査を継続して進め、基礎的資料の収集に努める。また、昨年度から導入したデジタル実体顕微鏡を活用し、より細かな観察を行う。また製品の調査と共に、鋳型製作に関する研究も推進し、具体的な鋳型加工の手順を含め検討を行う。現在は鋳型の加工遺跡から出土した資料の資料化を行っており、今後も継続して進める。-また、成果の一部を公表できる機会を用いて、これまで推進してきた成果を公にする。
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Research Products
(4 results)