2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720298
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
工藤 雄一郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (30456636)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 先史考古学 / 縄文時代 / 炭素14年代 / 植物利用 / 土器付着炭化物 / 安定同位体分析 |
Research Abstract |
縄文時代の人々が高度な植物利用技術を有していたことは一般的に理解されつつある。しかし,それぞれの種の利用が「いつ」,「どのように」始まったのか,縄文時代以降の「環境変遷史」とどのように関係していたのか。これらの諸点については十分には議論されていない。そこで,縄文時代の遺跡出土植物遺体などの14C年代測定を重点的に行い,資料の帰属年代を明確化していくことが必要不可欠である。 本年度に試料採取,およびそれらの分析を行ったのはおもに以下の2項目を重点的に進めた。1)宮崎県王子山遺跡および鹿児島県三角山I遺跡から出土した土器内面付着炭化物の安定同位体分析。2)西川津遺跡の弥生時代前期のウルシ材および漆液容器の14C年代測定 宮崎県王子山遺跡の炭化植物遺体と土器内面付着炭化物および鹿児島県三角山1遺跡の土器内面付着炭化物の分析を進め,縄文時代草創期の植物利用と土器との関係について検討を進めた。これらの土器付着炭化物の由来となった有機物は,王子山遺跡から出土している炭化植物遺体とは異なるものであり。動物起源の有機物を多く含んでいる可能性があることが判明した。縄文時代草創期の土器利用を考える上で非常に大きな成果である。 また,縄文時代との比較の目的で,島根県西川津遺跡から出土した弥生時代前期の漆液容器と傷跡のあるウルシ材,矢野遺跡から出土した弥生時代前期の漆パレットなど,漆関連遺物の14C年代測定を実施した。特にウルシ材は東京都下宅部遺跡についで2番目に古い資料であり,縄文時代の植物利用との比較のうえで貴重な分析事例となった。なお,これらの成果の一部については,2012年8月に中央大学で開催された,第13回国際花粉学会議(IPC-XIII)・第9回国際古植物学会議(IOPC-IX)合同大会や,日本旧石器学会,日本植生史学会等で研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
王子山遺跡と三角山I遺跡の隆帯文土器内面付着炭化物の同位体分析を通じて,縄文時代草創期の土器利用と植物利用との関係について具体的なデータが得られたことは,晩氷期において土器がどのように使用されたのかを解明していくにあたって,極めて重要であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに24年度に行った,宮崎県王子山遺跡の土器内面付着炭化物と炭化種実遺体および,鹿児島県三角山1遺跡の土器付着炭化物の炭素・窒素安定同位体比の分析データをまとめ,縄文時代草創期の土器で煮炊きされた内容物と植物利用について検討を行い,土器出現期の植物利用について,成果を公表すべく準備する。 また,新たに採取した,千葉県道免き谷津遺跡の縄文時代の漆製品の14C年代測定を進め,縄文時代の漆利用についても,年代学的な視点から考察する。
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