2011 Fiscal Year Annual Research Report
九州における更新世末の移動・居住システムの変遷過程に関する研究
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22720303
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
芝 康次郎 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (10550072)
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Keywords | 後期旧石器時代後半期 / 石材消費分析 / 移動・居住システム / 黒曜石利用の変化 / 遺跡分布の変化 |
Research Abstract |
本研究は、九州における後期旧石器時代後半期から縄文時代草創期までの人間集団の移動・居住システムを、石材消費分析から明らかにするものである。2年目である今年度は、九州の後期旧石器時代後半期前葉から中葉の石器群について、石材情報を集成し、必要に応じて現地での資料調査をおこなった。 現在分析を継続中であるが、概要は一定程度把握できた。主要な成果は以下のとおりである。 ・後半期前葉の石器群では、非黒曜石石材が主体となる。黒曜石産地付近には遺跡は分布せず、南九州東部のような優良な非黒曜石石材の獲得可能地域に、遺跡分布の重心がある。 ・後半期中葉の石器群では、前代の遺跡立地を引き継ぐが、遺跡数が増大し、これに伴って地理的分布範囲を大きく広げる。さらに黒曜石利用が大きく伸張し、黒曜石原産地遺跡などこれまでに見られなかった石器群が出現しており、居住システムの変化が想定できる。 ・後半期末葉の石器群では、一転して遺跡数が減少し、非黒曜石石材の利用が目立つ。それまで遺跡が濃密に分布した南九州東部に石器群がほとんど展開しない。 ・これに続く細石刃期には、遺跡数が大幅に増加し黒曜石利用が飛躍的に伸びる。両者ともに後期旧石器時代の中でも最大となる。さらに良質黒曜石の広域展開が目立つ。 以上のように、各時期によって石材消費戦略が連続的でなく断続的に変化し、これが遺跡分布と連動するようである。これはおそらく当該期の環境変化と社会システムの変化とに密接に関連していると考えられるが、これについては今後の考察に期したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の作業は資料集成を主体とする予定であったので、そこから一定程度の見通しが得られたことは、次年度の分析にスムーズに移行可能と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、実資料を調査する予定である。石材の石質や名称などは各報告書レベルでは統一的でなく、したがって実資料の実見調査が必要である。これに基づいて石材集成表を作成し、これもりこんだ成果報告書を作成する。
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Research Products
(1 results)