2010 Fiscal Year Annual Research Report
在来産業と小規模家族経営の構造と論理に関する歴史地理学的研究
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22720305
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
湯澤 規子 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教 (20409494)
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Keywords | 在来産業 / 家族経営 / 歴史地理学 / 農業経済学 |
Research Abstract |
本研究は、日本における在来産業と近代産業の展開と構造を歴史地理学の視点から解明することを目的としている。平成22年度は特に、主に次の3つの課題に取り組んだ。 課題1:産業構造の全体像を通時的把握 明治初年の産業構造を「府県物産表」から検討し、日本の産業における家内工業率の高さを指摘した古島(1962)、産業資本確立期の工業分布を「工場統計表」から明らかにした江波戸(1964)、近代産業と在来産業の構造変化を示した関(1997)の成果を総括し、その後の展開として、新たに「工業統計」を用いて現代に至る通時的把握を試みる。 課題2:入間織物業地域における平仙レース工場の展開と構造 明治・大正期の入間織物業地域を研究した谷本(1998)の成果をふまえつつ、その後の当該地域における展開を、入間織物の織元であった平山仙太郎が昭和4年に設立した「平仙レース工場」に着目して調査研究を進めた。当該工場の経営史料などについては管見の限り明らかになっていないが、社内報『むつみ』(昭和25年~昭和43年:全16巻)の発行が確認されており、一部を除いてその所在も明らかになった。この社内報の分析を進めるとともに、従業員の方々への聞き取り調査を実施し、レース工場従業員のライフヒストリー収集を進めた。 課題3:勝沼のぶどう栽培とワイン醸造の展開と構造-在来技術と近代技術の関係- 予備調査により、現在のメルシャン株式会社勝沼ワイナリーの前身である、大日本山梨葡萄酒および宮光園の史料群の存在を確認した。これらの史料の複写およびデータ入力を進め、ワイン醸造に関わる一企業の経営分析と地方文書との総合的分析、および聞き取り調査を実施した。 課題1は分析を継続しているところである。課題2は現在論文にまとめ、投稿中である。課題3は学会発表を完了し、現在投稿論文の執筆中である。
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