2011 Fiscal Year Annual Research Report
在来産業と小規模家族経営の構造と論理に関する歴史地理学的研究
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22720305
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
湯澤 規子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20409494)
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Keywords | 在来産業 / 家族経営 / 歴史地理学 / 農業経済学 |
Research Abstract |
本研究は、日本における在来産業と近代産業の展開と構造を歴史地理学の視点から解明することを目的としている。平成23年度は特に次の課題に取り組んだ。 課題1:入間織物業地域における平仙レース工場の展開と住民の暮らし 明治・大正期の入間織物地域に関する研究成果をふまえつつ、その後の当該地域における展開を、入間織物の織元であった平岡仙太郎が昭和4年に設立した「平仙レース工場」に着目して調査研究を進めた。そして一連の調査結果及び分析を論文「都市近郊農山村における高度経済成長期という経験-住民の就業履歴および平仙レース社内報『むつみ』の分析を通して-」『国立歴史民俗博物館研究報告』第171集、43-64頁(2011年12月発行)としてまとめた。 課題2=山梨県甲州市勝沼のぶどう栽培とワイン醸造業の展開と構造-在来と近代- 昨年度から閲覧・撮影を開始している(1)甲斐産葡萄酒会社および宮光園の史料群に加えて、(2)山梨県東八代郡祝村の旧役場文書【甲州市所蔵】、(3)大日本山梨葡萄酒会社(祝村葡萄酒会社)【山梨県立博物館所蔵】を新たに発見した。(1)~(3)の史料群のうち、明治初期の文書を中心に撮影を進め、分析にとりかかった。その結果、ワイン醸造業という新たな近代産業技術を導入するにあたり、当該地域が有していた在来の地域組織、資本蓄積、技術体系がそれに寄与したことが明らかになってきた。その内容は学会部会大会などで報告し、現在論文を執筆中である。また、ぶどう栽培、ワイン醸造業に関わる技術書を収集し、在来技術と近代技術がどのような関係にあるのかについて考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二つの地域研究において重要な史料が発見され、特に山梨県における調査では想定以上の史料群を確認することができた。質量ともに豊かな史料群であるだけに、撮影、分析等の作業に時間がかかっているが、それらが順調に進んでおり、来年度のとりまとめに向けての準備ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
地域における近代化過程についての概要を把握しつつあるが、以下の諸点がさらに深められる必要がある。すなわち、(1)時代区分を用いて段階的に解明すること、(2)政策と実態から在来と近代の移行過程を考えること、(3)ぶどう栽培、ワイン醸造業に関する経営分析をふまえることである。 (1)については特に明治初期の状況を明らかにする。(2)については、明治政府の殖産興業政策の全国的把握と合わせてその地域的展開について調査する。(3)については、祝村葡萄酒会社の経営動向、甲斐産葡萄酒会社の経営動向を明らかにする。
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