Research Abstract |
ICTの地域的な受容プロセスとその前提条件として行われる利害調整過程を,医薬品卸および同社と取引関係や利害関係を有する企業や組織に対して,ヒアリングを通じて明らかにした。筆者はすでに日本において,医薬品卸が顧客たる医療機関や保険薬局に対してICTを通じていかなるサービスを提供しているのか,その過程においていかなる利害調整が行われているのかについてフィールドワークを実施してきた。この一連の分析で得られた成果は,学術雑誌に論文として発表した。具体的には,人口密度と比較して医薬品卸数の多い長崎県の五島列島,卸間競争が激しい富山県や川崎市を対象として,企業概要に加えて,取引業務のうち,主要な取引先とその概要,取引の理由,その他の利害関係を有する組織との利害調整過程,特にICTの導入前後におけるこれら取引先や利害関係組織との協調関係が明らかになった。 一方,米国や欧州における医療環境の特性を既存統計や各国の事情に詳しいアナリストなどに対するヒアリングを通じて明らかにすることで,国際比較の実態調査に向けた事前調査を行った。欧米の医薬品流通の現状について,英国人の医薬品流通アナリスト(ドナルド・マッカーサー氏)と意見交換し,欧州における調査上のアドバイスを受けた。2010年11月には,筆者は自身がメンバーでもある,私的研究グループ「サプライチェーンロジスティクス研究会」メンバーとともに,医薬品卸や欧州卸協会,製薬企業,病院薬局に対して,欧州の医薬品流通の現状と事業内容をヒアリングした。その成果は学会で発表した。同研究会では,海外の医薬品流通の現状について定期的に勉強会を開催しており,その成果は,2010~2011年「Monthlyミクス」に「海外医薬品流通からのメッセージ」として,保高氏と筆者との共著で連載した。
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