Research Abstract |
昨年度に続き,医薬品卸がICTを通じて,ローカルな医療ニーズにいかに対応しているかを明らかにした。昨年度実施した,欧州におけるICTにともなう医薬品流通の変容に関する実態調査で得られた成果は,学会で発表した。また,私的な医薬品産業に関する研究会(サプライチェーン・ロジスティクス研究会)のメンバーで共有するとともに,商業誌「Monthlyミクス」に「海外医薬品流通からのメッセージ(欧州編)」としてメンバーとの共著で去年度に引き続き,今年度においても継続して連載した。 新興国市場の一つである中国において,日本からも先進的な情報技術を有した医薬品卸が進出し始めている。しかし,中国においてはそもそも統計データの整理が不十分で,医薬品流通の実態でさえ把握されていないのが現状である。そこで,新興国市場の例として,中国における医薬品流通システムの現状と情報化への取組みについて,現地調査により明らかにした。中国では保険医療改革が実施されており,M&Aを通じた医薬品流通の効率化が進みつつあることが明らかになった。これらの成果は,商業誌「Monthlyミクス」にメンバーとの共著で来年度以降連載する予定である。 日本においては,東日本大震災を事例に,非常時の医薬品供給体制において,需要と供給のミスマッチが起きたメカニズムを明らかにし,非常時にも対応しうる医薬品供給体制について安全性と効率性の観点から検討した。これらの成果は学会で発表するとともに,東北地理学会東日本大震災災害対応委員会ホームページに掲載した。加えて,商業誌「Monthlyミクス」にて公表した。 ICTが特定の地域に受容されていくプロセスをより一般化して提示するため,ICTの先進国たる日本と欧州,新興国たる中国の3地域における医薬品流通システムの実態分析を通じて,日本の医薬品流通システムを相対化することができた。
|