2012 Fiscal Year Annual Research Report
担い手のライフヒストリーからみた琉球織物継承の地域メカニズム
Project/Area Number |
22720309
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
井口 梓 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (50552098)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 地域文化 / ライフヒストリー / 担い手 / 琉球織物 / 沖縄県 |
Research Abstract |
本研究は、沖縄県を事例に担い手の行動パターンや意思決定に着目して伝統工芸の生産が維持継承される地域メカニズムを明らかにすることを目的としている。平成24年度は、石垣島・竹富島・西表島にて長期調査を実施し、八重山ミンサーや八重山上布の関係者、伝統工芸品の販売所、伝統工芸や地域文化を活かした地域づくりに取り組む関係者に聞き取り調査を実施した。その結果、以下の点が明らかとなった。 (1)竹富島に拠点を置く竹富織物事業協同組合では、戦後の民芸観光ブーム以降に生産量が増加してきたが、1990年代以降の八重山諸島一帯の観光化によって生産者が急減しており、担い手女性の多くは民宿経営や観光業の従事へと移行した。担い手不足や技術継承の問題は、沖縄県内の織物産地の中で最も危機的な状況である。 (2)一方で、西表島の組合員は2000年代以降に近畿圏からのIターン者が増加し、エコツアーガイド等と兼業しながら、ミンサーの技術を活かした小物製品を生産している。若いIターン者は、八重山ミンサーがもつ歴史性や郷土性、あるいは伝統工芸品としての価値よりも、地域の自然素材を活かして手作業で製布するエコロジカルな視点が評価されており、いわゆる民芸品にみられるような沖縄らしい鮮やか、かつ明瞭な意匠図案とは異なり、草木染めの風合いで落ち着いたデザインを用いるなど、新しい発想を組合にもたらしている。 (3)石垣市に拠点を置く八重山織物事業協同組合においても後継者不足や技術継承の問題が生じているが、一方で白保地区では、地域づくりの一部に八重山上布の継承を取り入れ、Iターン者の活動の場を提供する等、組合が実施する後継者育成事業とは異なるローカルな技術継承のシステムがとられるようになった。 なお、これらの研究成果は、日本地理学会秋季学術大会ほか3件で発表・講演し、田林編『商品化する日本の農村空間』(第19章担当)などにまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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