2010 Fiscal Year Annual Research Report
書籍物流システムの空間構造とその効率化に関する地理学的研究
Project/Area Number |
22720310
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Research Institution | University of Marketing and Distribution Sciences |
Principal Investigator |
秦 洋二 流通科学大学, 商学部, 講師 (70512698)
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Keywords | 経済・交通地理学 / 書籍物流システム / 垂直的企業間関係 |
Research Abstract |
本研究は,流通チャネル(取引経路)内におけるパワー関係と,物流システム研究における「トータルコスト」の概念に着目して,日本の流通システムの持つ空間構造の特質を考察することを目的に構想されたものである。研究の具体的な目的は,近年,卸売業者を中心とした中商流通業者が主導的な立場に立って改編を進めている書籍物流システムの空間構造を,それを利用する小売業者・中間流通業者,物流業者等のパワー関係に注目しつつ,その「効率化」がいかなる論理の元で行われてきたのかを明らかにすることにある。本年度行った活動は以下の通りである。まず第1に経済地理学,流通論を中心としつつ,さらにマーケティング論など隣接諸科学も含めた文献資料の収集および精読を行っている。第2には,大手取次会社の物流システム施設の見学および担当者へのインタビュー調査などを実施している。書籍物流システムに関しては,共同配送の採用による輸送シフトの固定化がリードタイムの短縮に際し,大きな問題となっていることや,年間7万点以上もの新刊書籍が発売されているため,取り扱いアイテム数が極めて膨大になることなどが指摘できる。書籍物流システムでは取引先からの注文に対する欠品を防ぐための安全在庫が極めて膨大になることから,在庫管理を分散的に行うことはシステムの効率性を著しく低下させかねない。このため,書籍の場合,物流システムの効率運営の観点からは大規模な施設での一元的な在庫管理が望ましいことなどが指摘できる。しかし,そのような施設を構築するための設備投資が可能な企業は,書籍流通業界では限られている。すなわち,経営規模の点からして書店や出版社がそのような投資をすることは困難であり,そのため当業界では大手取次会社がその中核を担っているのである。
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Research Products
(1 results)