2010 Fiscal Year Annual Research Report
ラオス焼畑山村におけるウシ・水牛飼養の地理学的研究
Project/Area Number |
22720322
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
中辻 享 甲南大学, 文学部, 准教授 (60431649)
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Keywords | ウシ / 焼畑 / 土地利用 / チガヤ / 山地放牧 / ラオス / 東南アジア / 休閑 |
Research Abstract |
平成22年度の科学研究費補助金の繰越金50万円を使用して,平成23年8月25日-9月3日までの10日間ラオスにおいて現地調査を実施した. 前年度(23年3月)りめ調査では,ウシ飼養の実態をルアンパバーン県シェンヌン郡内で広くみることに努めたが,今年度はその中でも特にウシ飼養の特にさかんな3村落(フアイペーン村,ブーシップ村,フアオイコーン村)にしぼり,集中的な調査した.その結果,以下のことが明らかになった. まず,放牧地設定の仕方が各村落で違うことである.各村落では以前,各世帯の焼畑が柵で囲われ,ウシや水牛は村落領域内で自由に放牧されていた.ところが,ラオス政府は2005年ごろよりこうした自由放牧を禁止するようになった.そこで,各村落は村内に柵で囲われた放牧地を設定することとなったが,その設定の仕方は村落面積の広狭により,異なっている.つまり,比較的領域面積の広いフアイペーン村やブーシップ村では広面積の放牧地が確保できており,飼料木足の問題は聞かれない.ところが,領域面積の狭いフアイコーン村では飼料不足が深刻で,恒久的な放牧地は設定できない.当村では,飼料となる野草をできるだけ確保するために,焼畑循環にあわせて放牧地を移動させるシステムを取っている.つまり,焼畑放棄後の休閑地では大量の野草が発生するため,放棄後1-2年の土地を中心に柵で囲って放牧地としているのである. 飼料不足問題の解決めため,フアイコーン村ではさらに,ルジグラスという牧草の導入を試みている. また,ここ3年ほどの変化として,ウシの伝染病の流行が頻繁になったことがあげられる.主にウイルス性出血性敗血症りと口蹄疫が流行しており,所有する家畜の全てが被害を被る例もみられる.これは人びとのウシ飼養への参入を阻む,あるいはその継続をあきらめる大きな要因となっている.
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