2011 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト社会主義状況下のモンゴル国の牧畜社会の動態に関する文化人類学的研究
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22720324
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
辛嶋 博善 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (60516805)
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Keywords | モンゴル国 / 牧畜社会 / ポスト社会主義 / 制度変化 / 文化人類学 |
Research Abstract |
前年に引き続き、ポスト社会主義下のモンゴル国において現地調査を行い、牧畜社会の動態を明らかにした。 以前より調査地において牧畜民の都市への移住の傾向が見られており、こうした移住が家畜を所有する牧民によるもので、所有していた家畜を牧地に留まっている牧夫に管理させることによって行われていることを、これまでの調査で明らかにしてきたが、この度の調査において、こうした事実を裏付ける統計的なデータを得た。これにより、調査世帯のみならず村内においてある程度一般性を持つ傾向であることが確認された。 こうした牧夫の中には、幼少期に社会主義体制崩壊後の混乱を経験して牧畜社会に流入した者がいるが、そうした者の中で、家畜の分与を受け、結婚して家畜所有者として独立して新たな世帯を構えるに至った牧夫も現れていることを確認した。 また、流通に関して、これまでの調査において家畜の解体における専門業者への委託について聞き取っていたが、この度の調査において、こうした家畜の解体を行う施設において、その実際を観察した。 宿営地の利用に関して以下の点を明らかにした。2003年の土地法の改正に関連して、冬営地、春営地の用地の保有に関するルールが郡において決定されたが、その取り決めが現在まで有効であることを確認した。また、以前の状況と同様、名義上の保有者と実際の利用者が異なる場合があることも確認した。ただ、この両者の間の「距離」、すなわち血縁の有無や親密さの度合いにおいて変化が見られる可能性があり、その点について今後解明する余地がある。また、冬営地は例えば夏営地のように携帯電話の電波の状況によって宿営地の場所を選択することが難しく、この間携帯電話を用いて草原と都市の間で連絡しあうことが出来ないという他の季節と異なる状況を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ、モンゴル国における現地調査を予定通り遂行し、当初の計画通り、牧畜社会における動態を確認することが出来た。成果の一部を口頭にて発表しており、これらの点から現在までのところ研究が順調に行われていると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、収集したデータの整理と、現地調査による補足と再確認を中心に行い、その精度を高めることに努める。 そして、それらのデータを元に、成果発表を行っていく。特に今後は印刷媒体への発表を中心に行う予定であり、現在既にその準備を進めている。
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Research Products
(3 results)