2012 Fiscal Year Annual Research Report
現代アフリカにおける民主国家と伝統的権威者の関係:ナイジェリアの事例研究
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22720325
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松本 尚之 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (80361054)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 文化人類学 / アフリカ / ナイジェリア / 王制 / 民主国家 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究は、ナイジェリアにおいて、諸民族の伝統的権威者が国家行政のなかで持つ役割や影響力について調査・研究を行うことを目的とする。3年目にあたる平成24年度は、当初8月にフィールドワークを行う予定であったが、調査地で行われるイベントの予定にあわせ12月から1月を調査期間とした。当初計画において設定した3つの主目標それぞれの成果は以下の通りである。 1.伝統的権威者の助言機関に関する調査:これまで調査を続けてきた行政村では、当該年度に伝統的権威者を決める選挙が実施された。調査では、その過程について、自治組織の役員や選挙管理委員のメンバーから聞き取り調査を行った。その結果、一村落の選挙に州政府や伝統的権威者の助言機関が介入する方法などが明らかとなった。 2.行政村の分割及び伝統的権威者の新設の過程に関するケーススタディ:今回の調査では、12月に新しい伝統的権威者の戴冠式を開催した行政村で参与観察及び聞き取り調査を行うことができた。同村は、10年に渡って州政府に対し共同体の新設を申請してきた経緯があり、行政村の分割及び伝統的権威者の新設の過程における政府の役割及び影響力を考察するうえで、重要な情報を得ることができた。 3.ラゴス州における比較調査:1~2の目標を考慮して調査委間を変更したことから、ラゴス州における比較調査については、当初の予定通り行うことができなかった。よって平成25年度の課題としたい。 以上の調査を通じて、政府と住民の間に位置する伝統的権威者の姿が明らかとなった。今日の伝統的権威者たちは、法規によってその位置づけや役割を定めらたことで、住民のみならず、政府からも正統性を得る必要がある。また住民たちも、自らが選んだ権威者を正統化する手段として、政府からの承認を求めるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ナイジェリアのなかでもイモ州ンビセ地方とラゴス州の2箇所におけるフィールドワークを予定してきた。 イモ州ンビセ地方における調査については、「研究実績の概要」に記載した通り平成24年度に新しい事例を加え、当初の計画以上に進展していると考える。今回、新しい伝統的権威者の戴冠を終えた行政村を調査対象に加えることができ、これまで調査を行ってきた2つの事例(権威者を選出中の村、権威者が死去し選出が始まった村)とあわせて、行政村の分割と伝統的権威者の選出と関わる一連の過程を確認することが可能となった。平成25年度に予定している調査も踏まえ、十分なデータを得ることができると予想される。 しかしその一方で、予定されたイベント(権威者の戴冠式)にあわせて渡航時期を変更した結果、当該年度は調査期間を短縮することとなり、当初計画していたラゴス州での調査を行うことができなかった。この点は、平成25年度の調査で補完したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当該年度に行った調査に引き続き、ナイジェリアにおいてフィールドワークを行う。調査拠点は、引き続きイモ州ンビセ地方及びラゴス州とする。 イモ州ンビセ地方では、これまで調査を行ってきた3つの事例を継続調査し、行政村の分割や伝統的権威者の新設過程における州政府、地方政府の役割を考察する。具体的には、各調査村落において自治組織の役員や称号保有者たちへのインタビューを行う。加えて、イモ州政府及び、ンビセ地方の3つの地方政府において伝統的権威者の助言機関の調査を行う。それぞれ助言機関の役員及び政府の担当局を対象として聞き取りを進める。さらに、当該年度果たせずにおわったラゴス州での比較調査を行う。 一方で、ナイジェリア南東部の治安は近年悪化してきており、状況によっては調査計画の変更を余儀なくされる恐れがある。万が一南東部での調査が不可能となった場合には、ラゴス州における調査の比重を増やすことで対応したい。 以上の調査に加え、最終年度にあたる平成25年度には、これまで集めたデータの分析・考察を進め、順次成果の発表を進めたい。
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Research Products
(1 results)