2011 Fiscal Year Annual Research Report
メキシコの社会空間と宗教実践をめぐる民衆文化的戦術:サンタ・ムエルテを事例として
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22720334
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
井上 大介 創価大学, 文学部・人間学科, 准教授 (20511299)
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Keywords | 文化人類学 / メキシコ / テピート地区 / 民衆宗教 / サバルタン階級 / 社会空間 / 戦術 / 聖人像信仰 |
Research Abstract |
1.本研究では、サンタ・ムエルテ信仰という民衆的宗教習俗を題材に、そこに立ち現われうるヘゲモニーの諸相、戦術などを用いた民衆文化の持続性、社会空間との関連性、などについて解明することを目的としてきた。23年度の第二回目の現地調査ではまず、ヘゲモニーとの関連で、メキシコにおける「死の表象」をめぐる正当性の変化という側面に留意し、様々な文献資料を収集し、年代ごとにその特徴を整理した。具体的な調査結果としては、死の表象が、15世紀以降のスペインによる植民地政策期以降、現在の「死者の日」と連動した諸習慣が社会的にその影響力を拡大し、そのような動向において野外での死をめぐる祝祭的民衆文化としての諸行事が活発化していく。またそのような動向に対し、17世紀にはカトリック教会から様々な否定的見解が表明されるとともに、18世紀以降はメキシコ・ナショナリズム形成期における国民国家形成のシンボルとして死の表象が用いられ、現在では「死者の日」がユネスコの世界無形遺産に登録されるなど、国民的正当性を獲得するに至ったという状況を整理したとともに、そのような「死者の日」と非常に隣接した表象であるサンタ・ムエルテ信仰が社会的には非常にネガティブなイメージを付与されているという点を確認した。 2.また民衆文化の戦術的諸特徴に関して、サンタ・ムエルテ信仰の中でも、ダビ・ギジェン・モロ氏の影響のもと、テピート地区で発展を続けるグループ(サンタ・ムエルテ教会)を中心に考察を展開した。 結果として、サンタ・ムエルテ教会を中心とした動向には、エンリケ・ロメロさんの祭壇を中心に展開されるサンタ・ムエルテ信仰よりも、社会的にネガティブなイメージが付与されており、その理由として、前者が後者よりもカトリック教会を意識した動向であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りの現地調査が実施できており、情報収集、分析、記述において予定通りの進捗状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題としては、本年8月に第三回目となるフィールド調査を約1か月間行い、研究スタート時に設定した仮説の解明、具体的にはサンタ・ムエルテ信仰がグローバル化との関係によって発展しつつあるのではないか、という仮説を検証すべく、調査内容について考察し結論を導き出す。
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Research Products
(2 results)