2010 Fiscal Year Annual Research Report
複数絵図情報の統合による集落の環境民俗建築学的研究
Project/Area Number |
22720340
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
老 文子 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 学芸員 (60470184)
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Keywords | 生活 / 生業 / 民家 / 間取り / 水利用施設 / 水家(ミズヤ) / 水路 / 集落環境 |
Research Abstract |
今年度は、集落内の建物の間取りを描いた間取り図を用いて、滋賀県湖東の集落と民家の復原研究を行った。測量図である都市計画図をベースマップとして、間取り図、地籍図、字切り図から、民家、水路、道などの情報を重ね、明治時代前期の集落復原図を作製した。この集落復原図を用いて、間取りを統計的に分析するだけでなく、集落空間と民家との関係について、多角的な考察を試みた。また、復原は絵図資料の分析に止まらず、集落や民家についての現状調査を実施し、絵図資料に描かれた情報の補完を試みた。 今年度は、滋賀県湖東の民家でよくみられる水家(ミズヤ)と呼ばれる水利用施設について、東近江市能登川町を事例に、能登川村間取り図(明治19年作製)を用いて復原的研究を行った。また、間取り図の記述をもとに、集落復原図を作製し集落内を流れる水路と水家との関係を考察するだけでなく、現存する民家に残された水家の実測調査もすすめ、間取り図の記述と比較検討を行った。調査の結果、能登川の水家は井戸または水路から取水しており、排水は水路に流されることが分かった。また、能登川の水路は表通りと平行して直線的に配置され、水家は水路に沿って分布していることが分かった。敷地割については、集落の中央を通る朝鮮人街道に沿って短冊型をしており、「宿的」な要素が強いことが分かった。 なお、本研究成果は、「間取り図および間取り図簿を用いた集落の復原的研究-滋賀県湖東の集落と民家を事例として-」という題目の博士論文に組み入れ、滋賀県立大学大学院に対して、2011年3月に提出した。
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