2010 Fiscal Year Annual Research Report
「交通死」被害者遺族の法的救済に関する法社会学的研究
Project/Area Number |
22730006
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小佐井 良太 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20432841)
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Keywords | 法社会学 / 交通事故紛争 / 被害者遺族 / 法的救済 / 損害賠償 / 「死別の悲しみ」 |
Research Abstract |
本年度は、当初の「研究実施計画」に従い、「交通死」被害者遺族に対する聴き取り調査を中心に研究課題に取り組んだ。調査結果の詳細な分析に基づく検討は、次年度以降に取り組む予定だが、現時点でその概要を示すと以下の通りである。 まず、聴き取り調査の結果から、「交通死」被害者遺族が事故の加害看に対して損害賠償を請求する際の意味付け方に対する多様な受け止め方を、改めて明らかにすることができた.本研究ではこれまで、損害賠償請求に対する積極的な恵味付けとこれに対する現状の法制度の下での限界を如何に調整するかを主として意識して研究に取り組んできた(一例として、定期金賠償方式を活用した損害賠償金のいわゆる「命日払い」請求に関する問題が挙けられる)。これに対して、本年度行った聴き取り調査の中で、ある「交通死」被害者遺族が加害看に対し損害賠償請求を行う一方、損害賠償に敢えて積極的な意味付けを与えることはせず、全てを弁護士に委ねることで、亡くなった被害看の「生命の恒段」に直面する事態を回避していた事実とその動機を確認することができた。この点は、民事の損害賠償における「交通死」被害者遺族の法的救済のあり方について、損害に対する填補よりも、むしろ加害者に対する処罰・制裁ないし責任追及として損害賠償の支払いを位置づけよう とする当事者の意味付けを、データに基づいて具体的に明らかにすることができたと言える.次年度以降は、こうした当事者=「交通死」被害者遺族が現行制度の下で認められる法的救済に与える多様な意味付けを、どのように法理論ないし法実務へ適切に反映させていけるか、.また、その際の理論的ないし実務的な課題を具体的に明らかにするための検討作業を進めて行く予定である。
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