2011 Fiscal Year Annual Research Report
「交通死」被害者遺族の法的救済に関する法社会学的研究
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22730006
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小佐井 良太 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20432841)
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Keywords | 法社会学 / 交通事故紛争 / 被害者遺族 / 法的救済 / 損害賠償 |
Research Abstract |
本年度は、当初の「研究実施計画」に従い、前年度に引き続き「交通死」被害者遺族に対する聴き取り調査を中心に研究課題に取り組んだ。調査結果の詳細な分析に基づく検討は、最終年度となる次年度に取り組む予定だが、現時点でその概要を示すと以下の通りである。 今年度の研究では、主として「交通死」被害者遺族の刑事裁判/刑事司法手続における「法的救済」のあり方に焦点を置いて聴き取り調査を行った。具体的には、計3件の刑事裁判の傍聴と併せて、被害者遺族当事者の刑事裁判に臨む心情や法に対する「期待」の中身等について聴き取りを行った。全体として、被害者遺族当事者には刑事裁判への主体的・積極的な関与を望む姿勢が見られ、実際に被害者参加制度や意見陳述等の制度を最大限に活用しているものの、制度の運用状況や関係者の制度趣旨に対する理解・支援が必ずしも十分でないこともあり、その主体的・積極的関与に要する労力に比して「報われない」思いを抱いている被害者遺族当事者の姿が浮かび上がってきた。刑事司法手続における被害者遺族の「法的救済」のあり方については、被害者支援の観点にとどまらず、刑事司法手続における主体的関与がもたらす「法的救済」の機能・効果も視野に入れて、今後、理論的な検討を詰めていくことが課題である。また、他の聴き取り調査の機会においては、危険運転致死傷罪の適用のあり方をめぐって被害者遺族当事者との意見交換も行った。刑事司法手続における「法的救済」において量刑判断がもたらす法的評価の側面、その意味的理解に対する検討が重要であることを確認した。この点についても、引き続き検討を行う予定である。 なお、昨年度までの研究成果を踏まえて、学術図書の分担執筆として成果公表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従い、着実に研究を進めている。研究成果の一部について、学術図書の分担執筆の形で成果公表も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、最終年度に向けて着実に研究成果の取りまとめ作業を進める。なお、最終年度においても、可能な限り、できるだけ聴き取り調査を実施する予定である。
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