2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会における「支援型法」の可能性と限界ー自己決定を実現させる法的枠組みの構築
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22730009
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
菅 富美枝 法政大学, 経済学部, 准教授 (50386380)
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Keywords | 意思決定支援 / 障害 / (市民)社会 / 成年後見 / 社会的包摂 |
Research Abstract |
2011年度は、従来、単なる財産管理制度に過ぎなかった成年後見制度を、「意思決定支援」を主目的とした制度へとパラダイム転換すべく、そのために必要な具体的な「装置(=法制度や社会的システム)」のあり方について、調査・研究を行った。その際、後見人(すなわち、支援者)の権限に焦点を置くわが国の成年後見制度が民法の枠を出ることが難しいのに対して、支援を受ける本人に焦点を置くタイプの成年後見制度(例 イギリス2005年意思決定能力法)においては、より柔軟に本問題に対応できることに着眼した。 海外調査として、ドイツ(ベルリン)、イギリス(ケンブリッジ、ロンドン)に赴き、研究者(法学者、精神医学者、社会学者)のほか、現場を担う実務家(福祉関係者、病院関係者)と交流を図り、意見交換を行った。特に、イギリスにおいては、「法律行為」を行う際に本人の意思を反映させる代行決定の方法を学んだだけではなく、「事実行為」を行う際の決定の行われ方や、より重要ものとして、支援の行われ方を見た。 成果発表として、フランス(リヨン)における国際家族法学会において報告を行った他、雑誌論文や図書の形で多数出版し、さらには、弁護士会、司法書士会、社会福祉士会、福祉関連の各種法人から招聘を受け、複数の講演を行い、社会啓蒙に努めた。 以上、知的障害・精神障害などのために判断能力の不十分な状態にある人々を、社会的に包摂しながら支援するという国家プロジェクトを実現させるべく、本年度も、本研究は着実な前進を遂げ、その成果を社会に還元できたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究成果を学界において発表する中で、一般社会からも注目され、2012年度は計9回の招聘を受け、講演することができた。制度改革のためには、立法・法改正の必要性もさることながら、人々の意識の変革が不可欠であり、時にそれらが前者を促進することからも、社会に向けてメッセージを発信することの重要性と手ごたえを実感することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらに、「意思決定支援」によって自己決定を実現させる法的・社会的仕組みのあり方を模索すべく、アンケート調査など、統計を用いた研究を行っていきたいと考える。
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Research Products
(7 results)