2011 Fiscal Year Annual Research Report
最適で開かれた公的規制の法構造-放送法制を素材として
Project/Area Number |
22730018
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲葉 一将 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50334991)
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Keywords | 公的規制 / 最適規制 / 公開 / 関係構造 / 放送法制 / 韓日比較 / 自主規制 |
Research Abstract |
昨年度は、放送事業者による表現の自由の保障という憲法的価値が、放送行政の権力的な行為形式の否定と同時に非権力的な行為形式を生むこととなり、さらに権力的な行政活動が、これ自体は行われていないが、放送業界における自主規制となって形を変えつつ回帰している、という諸現象を生じた日本における構造を明らかにしようとしていた。昨年度の研究成果を活かしつつ、これを発展させる目的で、今年度は、行政機関による放送についての種々の規制と放送業界による自主規制との相互関係性さらには互換可能性を有するものとしての、あるいはこれらの対立しつつ、相互依存する主体による規制を包含するものとしての公的規制を、最適および公開の観点から論じて、問題の所在を明らかにしようと試みた。具体的には、日本の放送法制とは異なる特徴を有するものと思われる韓国の放送法制の調査研究を、韓国全南大学の咸仁善教授の協力を得て行った。韓国から見た場合の日本の放送法制は、法制度の外部において放送自主規制が行われているという現象も視野に入れると、法化していない分、最適な規制が試みられているという一面があるとしても、公的に開かれた規制であるとは必ずしもいえない一面もある。放送法制の外部において、BPOによる放送自主規制が外部委員の任命等の組織の第三者性の向上を試みて、このようにして開かれた自主規制が追求されているように、公開、が放送法制の課題である。これは、従来の放送法制を規定していた、放送行政と放送業界との間で形成されていた構造の変革というかねての課題でもある。
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