2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730020
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
奥谷 健 広島修道大学, 法学部, 准教授 (70335545)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 相続税 / 納税義務者 / 遺産取得税 / ドイツ相続税法 |
Research Abstract |
平成23年度の研究成果をもとに、遺産取得税方式のもとでの相続税の納税義務者について検討した。具体的には、ドイツでは、遺産取得税方式に基づき、一定の条件のもとで、法人にも相続税の納税義務を課していることから、その根拠について検討を行った。そして遺産取得税の下での遺産取得者としての担税力の増加に着目し、財産の帰属が基準となっていると理解した。 他方で、我が国の相続税法は、法人は納税義務者とはなりえない。その根拠は、法定相続分を考慮する税額計算方式を採用しているため、と考えられている。これは遺産税方式に基づく理由づけであると考えられる。しかし、我が国の相続税はその基本は遺産取得税方式であるといわれる。そうであれば、ドイツがそうであるように、法人に対する相続税課税も可能であると考え、その理論的可能性を検討し、その余地があると考えた。また、法人が相続税の納税義務者とならないことによって生じる、所得税との不均衡についても事例をもとに検討し、遺産取得税のもとでの統一的課税の必要性についての結論を得た。これについては、研究成果として論文を公表した。 次いで、相続税の課税対象について検討している。この点については、平成22年7月6日最高裁判決の理論により、所得税と相続税の二重課税の可能性が指摘されている。このほかにも、相続前に係争中であった所得税の還付請求権が相続税の課税対象となるとされた判決など、相続税の課税対象について、所得税との関わりでいくつかの注目すべき最高裁判決が出されている。それらの事例をもとに、またドイツの議論を参考に、相続税の課税対象をどうすべきか、という点について、所得税との二重課税の防止を視野に入れながら検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定した通りの研究を進め、それについての成果を得ている。またそれらを論文にすることもおおむね良好に進んでおり、今年度も研究成果の論文1つを公表することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね現在の研究を進めていくことでよいと考えている。しかし、今年度はドイツでの調査が実施できずなかった点で、議論状況などの把握に若干の不安があることも事実である。次年度はドイツ調査を実行し、成果を上げていきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)