2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730021
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
岸野 薫 香川大学, 法学部, 准教授 (70432408)
|
Keywords | 合衆国憲法 / 南北戦争・再建期 |
Research Abstract |
本年度は、憲法秩序変動期としての南北戦争・再建期の憲法秩序について考察を行った。本研究の根底にある問いは、この時期は、Bruce Ackermanらによって、合衆国における三大憲法秩序変動期のひとつとして数えられているが、果たしてそうか、という問いである。本年度は、この時期の特筆すべき事象として、(1)1776年の独立宣言に「理念」として描かれた平等の概念が、第14修正という形で憲法に明示されるに至った経緯とその効果、(2)連邦制度の大きな変革に焦点を当てて検討を行った。 わが国では、この時期の憲法秩序について論じる先行研究が非常に少ない。再建期憲法修正条項の原意を探るもの、再建期における連邦最高裁判決を読み解き、最高裁の再定位をはかるものなどがわずかにあるが、制憲期やニュー・ディール期に関する先行研究の量に比べれば、その差は歴然である。 その中で、本研究が、制憲期からの主権概念の用いられ方に留意しつつ、上記2つの事象を歴史的に明らかにし、そこから制憲期より通底する一定の思想を抽出したことには、一定の意義があったと考えている。 また、上述のような検討を通じて、次につながる新たな視角を見出すこともできた。再建期において、公私区分論が共同体を維持するための排斥の理論として現れてきているという点である。 本年度の研究は、南北戦争・再建期の憲法秩序に関する研究の序説にすぎない。今後、この新たに析出された論点を含め、更に多角的に、南北戦争・再建期がアメリカの国家構造及び憲法秩序に与えた影響について、考察を深めていきたい。
|
Research Products
(2 results)