2010 Fiscal Year Annual Research Report
国際金融市場規制法における政策の形成・実施・執行過程に対する公法学的・動態的分析
Project/Area Number |
22730022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 大樹 九州大学, 大学院・法学研究院, 准教授 (90404029)
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Keywords | 公法学 / 行政法学 / 国際金融市場 / 政策形成 / 多元的システム / バーゼル合意 / 自己資本比率規制 / 国際会計基準 |
Research Abstract |
本研究は,国際金融市場(銀行・証券・保険)に対する規制の政策形成・実施・執行過程の現状を,公法学的な問題関心から動態的な視点をもって分析し,行政法一般理論へのフィードバックと,あるべき国際金融市場規制法の制度設計論を提示することを目的としている。 今年度は,個別分野の研究として,主として銀行規制の分析を行った。2008年の金融危機以降,銀行に対する規制を強化する動きが続いており,その中でバーゼル銀行監督委員会などの国際機構が果たす政策形成・調整機能が大きくなってきている(例:バーゼルIIIの成立)。このことは国内法の場面においては,法治主義や民主主義と国際的ルールとの緊張関係をより高める結果になっている。そこで,解決の方向性としては,(1)国際レベルにおける政策・規範形成における(広い意味での)「正統性」を高めること,(2)国内レベルにおける国際ルールの(広い意味での)「実施」の手続的・実体的な枠組(メタルール)を設定することが考えられる。いずれの作業においても,従来の公法学が前提としてきた国家像や国際法関係,さらにはその下で理論的に構築されてきた諸概念を,国際金融法における現状と突き合わせて再構築する必要性が高いことが改めて明らかになった。 今年度はまた,総論的な研究として,主としてアメリカ法やドイツ法(EU法)で議論されてきている国際法と行政法の関係を巡る論争を踏まえて,多元的システムのもとでの行政法学のあり方の方向性を示す作業をも行った。今後は,各論的な研究を継続するとともに,その成果を常に総論部分にフィードバックする作業も重点的に実施したいと考えている。
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Research Products
(5 results)