2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730027
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
植木 淳 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (50364146)
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Keywords | 障害差別禁止法 |
Research Abstract |
2011年度は、2010年度に刊行した『障害のある人の権利と法』(日本評論社)で展開した議論を社会的に発信することと、個別具体的事例への応用を試みた。それとともに、障害差別禁止法理の基礎づけに関する理論的課題と、障害差別禁止法の執行・救済手段という実践的課題の研究を開始した。 まず、「障害差別禁止法理」の社会的発信として、平成25年を目途として障害差別禁止法を制定すべく議論を重ねている「内閣府・障がい者制度改革推進会議・差別禁止部会」にて、アメリカの障害差別禁止法であるADAの概要と判例展開を報告した(2011年6月10日)。また、基盤研究(A)「障害者法プロジェクト-自律論・差別論・正義論を基盤とした障害者法学の構築」研究会において、「障害差別禁止法の可能性と課題」と題する報告を行った(2012年2月27日)。また、各論的に、障害のある人の政治参加の権利に関する事例である中津川市議会代読拒否訴訟(名古屋高裁にて係争中)に関する意見書を執筆した その一方で、障害差別禁止法理の基礎づけに関する議論として、近年のアメリカ障害法においては「福祉から市民権を」という標語に代表される市民権アプローチの限界が指摘され、社会保障の必要性を重視する見解が有力になりつつあることに注目して、S.Bagenstos、M.Weber、M.Waterstoneらの所説を研究した(2012年秋の学会報告にて研究成果の公表予定)。また、障害差別禁止法の執行・救済手続に関して、アメリカ障害法の経験を踏まえて、日本に適合的な行政救済・司法救済の在り方を考察するための研究を継続中である(2012年中に公表予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度である2010年には、『障害のある人の権利と法』を公刊して、アメリカの障害差別禁止法であるADAの憲法学的意義・法令の構造・判例の展開を紹介するとともに、日本における障害差別禁止法理の可能性と課題に関して論じた。2011年度は、同書で展開した議論を社会的に発信することと、次の研究課題の準備に時間を費やしてしまったが、その成果は2012年度には公表できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
障害差別禁止法の制定に向けた議論に貢献しうるように、拙著で提唱した「障害差別禁止法理」を社会的に発信するとともに、その理論的課題(「市民権アプローチ」と「社会権アプローチ」の相克)と実践的諜題(行政救済と司法救済の在り方)について、更なる研究を進める。
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