2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730028
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
渕 圭吾 学習院大学, 法務研究科, 准教授 (90302645)
|
Keywords | 租税法 / 情報の経済学 / 租税回避 / 国際課税 / タックスヘイブン / インセンティブ / 租税条約 / 内国民待遇 |
Research Abstract |
平成22年度においては、かつて執筆した助手論文を改訂・補充した論文「取引・法人格・管轄権(2)-(5・完)」を公刊することができた。この論文は、もともと、国際的租税回避への関心から執筆を始めたものであり、その一部は平成16年に公刊していた。しかし、その後、諸事情のため、また問題の本質を捉えられていないのではないかという危惧から、続編を公表できていなかった。ところが今回の科研費の研究を通じて、一気に本質を捉えるに至った。単なる国際的なモノの物理的な移動が問題なのではなくて、課税所得計算主体をどのようにとらえるかということが、いわゆる本支店間「取引」を認識する必要性と結びついているということが判明した。 また、国内法に関する基礎的な概念を振り返るという趣旨の論文集において執筆した論文(「適正所得算出説を読む」)を通じて、以上の議論を国内法(法人税法22条2項等)の解釈論として展開する可能性を示唆した。こちらについてはまだどの程度学界の支持を得られるかわからないが、先行業績に対してこれまでとは違った角度から光を当てることができたのではないかと自負している。 本研究の開始時点で、国際的租税回避に関して「どのように制度設計をするか」という観点から研究することを志したが、以上のような暫定的な結論が得られたため、これを次年度以降の作業において具体的に移転価格税制等について分析する際の理論的基礎とすることができるようになった。平成22年度の実施計画においては、実務界へのインタビュー等を考えていたが、上記のとおり理論的研究を先行させてしまったため、次年度以降において実務界へのフィールド・ワーク等を行い、暫定的な結論の妥当性を検証することとしたい。
|