2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730028
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
渕 圭吾 学習院大学, 法務研究科, 教授 (90302645)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 公法学 / 租税法 / 租税回避 / 国際課税 / タックス・ヘイブン / 租税条約 / 帰属所得主義 / 信託 |
Research Abstract |
平成24年度においては、国際的租税回避に関する、あるいは、それとつながる、重要な諸問題についての論文を公表することができた。 すなわち、媒体の性質によって本科研費への謝辞を記載することがかなわなかったが、国際課税における「法人」の意義に関する判例研究、同じく「住所」の意義に関する判例研究を公表した。また、国際租税法において重要な役割を果たしている「信託」について、その財産承継の場面での利用(民事信託)にしぼって考察して、それを信託法学会で報告した他、大学の紀要に詳細な論文を掲載することができた。さらに、国際租税法について長年論じられてきた、外国法人・非居住者に対する課税方式の問題(帰属所得主義か全所得主義か)について、最近のOECDや日本での議論をふまえて、見通しを与えるような論文を商業誌に公表することができた。 該当期間には公表するに至っておらず、また、これまた媒体の性質上科研費への謝辞を記載できない可能性があるが、本年度の研究実施計画において予告したタックス・ヘイブン対策税制と同族会社の留保金課税についての論文も近々刊行できる予定であり(脱稿済み)、憲法と租税法の関係についても論文を執筆済みである(脱稿済み)。 いずれにおいても、これまで必ずしも指摘されていない事実や観点を指摘できたのではないかと自負している。 他方で、研究実施計画で予告したもののうち移転価格税制の本質論についての各論研究は、今のところ、論文の公表につながるほどまとまった成果には達しておらず、今後の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に前年度に本研究の研究目的として記したテーマについて暫定的な結論を示す論文を公表できていたが、本年度に公表された論文や脱稿済みの論文を通じて、本研究で扱おうとした内容が単に国際租税法に関する制度設計にとどまらず、より大きな文脈において位置づけられることが明らかになってきたため。具体的には、タックス・ヘイブン対策税制と同族会社の留保金課税の共通性、「法人」や「信託」といった概念の諸相、とりわけ、こうしたエンティティに対する背後の個人の関わり方(デット的なのか?エクイティ的なのか?等)、帰属所得主義対全所得主義の論争で見落とされていた問題、等について明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、平成25年度が本研究としては最終年度となるが、これまでに得られた知見を生かしつつ、さらに積極的に、租税法以外の分野にも乗り出して、研究を進めていきたい。とりわけ、実務家との議論、他の分野の研究者との議論も含め、これまでの本研究の成果を批判してもらい、それによって、研究の質をより高めていきたいと考える。いずれにせよ、血税を預かって研究を進めているという意識を持ち、研究成果を公共のためにフィードバックしていけるように(つまり、論文の形で広く公表することに)努めたい。
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