2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730032
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
辻 美枝 京都産業大学, 法学部, 准教授 (00440917)
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Keywords | 消費税 / 保険 / 国際課税 / 租税回避 |
Research Abstract |
現行消費税法上、保険取引は非課税取引として取扱われている。本年度は、ニュージーランドの制度との比較からこの非課税取引とする取扱いを批判的に検討し、保険取引に係る消費税の課税ベースの見直しを試みる。本年度の研究は国内保険取引のみに限定して論じているが、次年度で行う予定である保険取引の国際的側面からの研究の基礎研究として位置づけている。 わが国の保険法および保険業法上、保険の定義は明確に規定されておらず、保険(非課税・不課税取引)とそれに類する性質を有するもの(課税取引)との消費課税上の取扱いの区別が租税中立性の観点から問題となってくる。一方で、この論点は、保険を含む金融取引は多くの国で未だに非課税取引として扱われているため国際競争力の問題、非課税のそもそもの理由である課税技術上の問題、課税方法の変更に伴う事務コストの増大と税収の増減とのバランスなど様々な考慮すべき問題を抱えているため、多方面からの検証が必要であり、ただちに非課税から課税へシフトすべきであるとはいえない。ニュージーランドは、GSTの導入当初から損害保険については課税ベースに含めており、それ以外の保険についても金融サービスとして当初から非課税扱いをしていたが、選択によりゼロ税率による課税が行われるようになっている。ニュージーランドの制度の検証を行うことは、上記の問題解決の端緒となりうる。保険取引を消費税の課税ベースに含めるためには立法的対応が必要ではあるが、現行の帳簿方式による消費税の枠組みの中でも課税を行うことが可能であるということは認識すべきであろう。消費税の将来の制度設計においてインボイス方式への移行を議論する場合にもその点の考慮が必要になってくる。
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