2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730032
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
辻 美枝 京都産業大学, 法学部, 准教授 (00440917)
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Keywords | 消費税 / 保険 / EU |
Research Abstract |
EUでは、欧州司法裁判所(以下ECJという)への保険取引の付加価値税(以下VATという)非課税に関する訴訟が増加し、判例法が形成されている一方で、わが国では保険取引の非課税該当性を争った裁判事例は見当たらない。それは、わが国の税制に全く問題がないということを意味するものではない。本年度の研究目的は、ECJ判決の分析を通して、わが国においても潜在的に存在している可能性のある問題を導き出し、検討を行うことである。具体的には、ECJ判決が示すVATが非課税とされる保険取引の射程範囲を整理、分析し、わが国において考慮すべき保険取引への消費課税上の問題の検討を行った。 わが国の消費税はEUのVATを参考に導入されたとされるが、少なくとも保険取引に限って言えば、わが国とEUの非課税の規定の仕方に違いがみられる。非課税の対象を、わが国は「保険料を対価とする役務提供」と規定し、通達において保険代理店手数料等は課税対象となる旨が規定されている。一方、EUでは「保険および再保険取引」を非課税と規定し、さらに「保険ブローカーおよび保険エージェントが行う関連サービス」も非課税と規定する。非課税の範囲は、EUでは、一般的な理解よりも広く捉えている。 平成元年の消費税の創設当時と比べると、保険をめぐる経済的・社会的環境は、保険法および保険業法の改正をはじめとする法規制の変化、金融商品の多様化・類似化などに伴い、大きく変わってきている。保険仲立人制度は欧米の例を参考に導入されたとされ、グローバルに展開する保険事業において、保険募集制度として肩を並べてきている。諸外国との国際競争上の観点を考慮すると、一つの消費税制度のあり方として、消費税制定後に創設、改正された保険募集制度について、その提供するサービスの取扱いを改めて検討し、非課税の是非を問うことが必要であると考える。
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