2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境保護のための市民参加制度に関する理論的・実証的研究
Project/Area Number |
22730034
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
林 晃大 近畿大学, 法学部, 講師 (80548800)
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Keywords | 公法学 |
Research Abstract |
近年、国際的な環境保護運動が活発化し、そのための手段の1つとして、オーフス条約の提唱する「市民参加」が重要であると考えられている。平成22年度、私は、オーフス条約の提唱する「市民参加」のための3本柱の内、「公的機関の有する環境情報への市民によるアクセス」について、イギリスにおける制度を基に研究を行った。 イギリスにおいて、行政が保有する環境情報の公開は、(1)公的機関が能動的に市民に公開する「情報提供」と、(2)市民からの開示請求を受けて公開する「情報開示」という2つの制度から成り立っている。前者については、様々な環境関連法規が公的機関に対して公的登録簿の作成とその提供を義務づけており、市民はそれを通じて環境情報を入手することが可能になっている。この公的登録簿については、拙稿「イギリスにおける環境情報提供手法-公的登録簿制度についての一考察-」近畿大学法学57巻4号(2010年)において既に研究が行われている。そして、このような公的登録簿を通じて入手することができないような環境情報については、市民は2004年環境情報規則に基づき開示請求を行い、それを入手することとなる。私はこのような市民による開示請求を通じた環境情報の開示制度について、その歴史や、情報開示が行われるシステム、開示・不開示の判断基準などについて、情報審判所で争われた事案などを検討しながら研究を行った。そして、最終的にこのような制度の意義、日本法への示唆を導き出し、「イギリスにおける環境情報開示と2004年環境情報規則」近畿大学法学58巻2・3号(2011年)という形で発表した。わが国においては、イギリスにおける環境情報公開制度についての先行研究は十分ではなく、これらの研究が、これからわが国でも活発化するであろう積極的な「環境保護のための市民参加制度」導入のための1つの参考となるであろうと考える。
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