2010 Fiscal Year Annual Research Report
最近の投資協定仲裁における国内救済前置の動向とその理論的意味の研究
Project/Area Number |
22730035
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂田 雅夫 北海道大学, 大学院・法学研究科, 助教 (30543516)
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Keywords | 投資協定 |
Research Abstract |
本研究は、投資協定に基づく最近の仲裁裁判手続きにおいて、かかる国際的な仲裁手続きに訴える前に国内の裁判所を利用すべきことを求める判決が出されていることに着目し、このような国内救済前置を要求する裁判所の論理を検討し、その理論的意味を明らかにすることにあった。 平成22年度では、まず主要な投資協定仲裁の場である投資紛争解決国際センターの設立条約、投資協定の関連条文などの検討を行った。国際的な仲裁手続きに訴える前に、国内の裁判所で救済を求めるべきか否かについては、投資紛争解決条約の作成過程で諸国の意見が分かれていた。そのため投資紛争解決条約では、条約上国内救済前置を要求も廃止もせず、仲裁を利用する諸国の事前の申請および個別の合意により問題を処理することを定めている。諸国が定める投資協定も、国内救済の前置を求めるものが散見されるが、それは1980年代以前のものに多く、最近の協定にはあまり見受けられない。 平成22年度の研究の中心として、投資協定仲裁の判例分析を行った。先述の通り、仲裁の手続き法規である投資紛争解決条約や付託根拠である各投資協定では、仲裁付託の手続き的用件として国内救済の前置を求めてはいない。それに対して仲裁判例は、仲裁の実態条項の違反成立の実体的条件として国内救済の前置を求める傾向にある。国内の裁判所や立法機関、行政の上位職による公権力を行使を伴う行為のみが投資協定の対象であるとする「主権的行為(公権力行為)」が最も多く用いられる根拠であった。しかしながら今までのところ仲裁判例の分析からは、なぜ明文の根拠なしに、「主権的行為」のみに投資協定の適用対象が限られるのか、また「主権的行為」の具体的範囲について明らかにする判例を確認できてはいない。
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