2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730039
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
渡辺 豊 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40554861)
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Keywords | 国際人権法 / 地域人権条約 / バンジュール憲章 / 社会権 |
Research Abstract |
平成23年度は、アフリカ及び米州の地域人権条約の実行を事例検討を基礎にできるかぎり幅広く精査し、それぞれの実行における特色や異同、問題点の析出を行うことを目標とした。そのため、国内外の資料を広く集めるために、日本国内では一橋大学など国内の大学図書館にて資料の収集を行うと共に、研究者との意見交換を行った。また、日本では入手が難しい雑誌論文などを収集する目的で、フランス・ストラスブール大学図書館にて文献調査を行った(平成24年2月16日~24日)。これらにより、ヨーロッパのみならず、アフリカ及び米州における人権条約の実行についての基礎的な資料をかなりの部分得ることができた。 平成23年度は、平成22年度の成果及び平成23年度の資料蒐集による結果を基礎に、特にアフリカにおける事例分析を精力的に行い、その結果を論文として公表した。 分析の結果明らかとなったことは以下の通りである。アフリカ人権条約(バンジュール憲章)の実行においては、条約中の権利侵害についてかなり積極的な判断が行われている。これは殊に経済的制約により権利の実現が難しいと言われている社会権についても同様であり、国家の裁量により権利を一定程度制約するといったことを認めず、権利実現について強力な立場で臨んでいることが明らかとなった。ただしこのような姿勢については、その実現可能性や理論的背景についてはさらに検討を要する点があり、引き続きヨーロッパ・米州及び国連における人権条約の実行と照らし合わせ全体像を明らかにする作業が今後も必要になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は文献蒐集を基礎とした、理論及び実証に関する検討を主としている。基本的な文献の蒐集はかなりの程度進んできており、それを基礎として定期的に成果を公表している。内容について今後とも緻密な議論を行い、さらなる成果を得られるようにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究目的に鑑みて、最も肝要であるのがそれぞれの地域人権条約の実行分析である。アフリカの実行については、平成23年度で一定程度成果として明らかにすることができた。今後の重点は米州における実行を集中的に検討することである。さらに、ヨーロッパにおける最新の実行を参照しつつ、これらの異なる条約体制相互の比較検討を進めることが、次年度における優先事項となる。 また、資料蒐集についてこれまでの国内及び外国に調査で基礎的な資料は大方蒐集できたことから、平成24年度は外国での蒐集を要しないと思われる。
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