2011 Fiscal Year Annual Research Report
核・生物・化学セキュリティと国際法:汎用物質の平和利用確保のための規律メカニズム
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22730040
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
阿部 達也 青山学院大学, 国際政治経済学部, 准教授 (80511972)
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Keywords | 国際法 / 軍備管理 / 汎用物質 / セキュリティ / 平和利用 / 化学兵器 |
Research Abstract |
本研究の目的は核・生物・化学セキュリティの問題を国際法の規範的・制度的観点から考察し、汎用物質の平和利用確保のための規律メカニズムの特徴と課題を明らかにすることにある。本年度は、研究の立ち上げから展開への移行期間という位置づけの下、前年度に引き続き関連する参考文献および資料の収集と各種会合に出席しかつ会合への出席者に対して聞き取り調査の実施を行い、これらを踏まえてそれぞれの法的枠組みにおける具体的な取り組みについて予備的な分析に着手することを計画した。この計画に従い、本年度はとくに化学セキュリティに関する議論の前提として化学兵器の使用禁止に関する国際法規範の展開を位置づけこれを集中的に検討した。 具体的には、2011年5月の国際法学会において「生物・化学兵器使用禁止規範の位相-国際刑事裁判所(ICC)規程の改正を契機として-」という題目で報告を行い、この報告を基礎として、『国際法外交雑誌』第110巻3号(2011年11月刊行)に拙論「化学兵器の使用禁止に関する規範の位相-国際刑事裁判所(ICC)規程の改正を契機として-」を発表した。 拙論では、化学兵器の使用禁止に関する規範が1925年のジュネーヴ毒ガス議定書を出発点として、一方では兵器の使用規制に特化した人道法アプローチを通じて強化され他方では兵器の全面禁止を目的とする軍縮法アプローチを通じて発展を遂げていることを、関連する国家実行と学説の詳細な分析から明らかにした。そして、化学兵器の使用禁止という同一の主題に対する複数のアプローチによる規律には、それぞれ自律的な性格を持ちながら実際には相関・交錯する関係の中で一定の調整を図りつつ、全体としてできる限り幅広く法の網をかぶせることを通じて規範の実現を図ろうとすること意義が見出される旨を指摘した。 以上の研究成果は化学セキュリティに関する国際的な規律の方向性を見定める上で重要な意義を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生物セキュリティに関して必要な資料を入手した。 化学セキュリティに関して、議論の前提的な考察として化学兵器の使用禁止規範の展開について学会で報告しかつ学術論文としてこれをまとめた。また、従来からこの分野に取り組んでいる化学兵器禁止機関(OPCW)関連会合への出席を通じて必要な資料を入手し、議論の動向を聴取した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の対象として当初は核セキュリティ・生物セキュリティ・化学セキュリティのそれぞれを網羅的に扱う予定としていたが、今後はその中でも主として化学セキュリティに焦点を絞って研究を遂行する予定である。これは、研究代表者が化学セキュリティの問題を1つの任務とする国際機関(化学兵器禁止機関:OPCW)に派遣されることになったためである。
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