2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730041
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹内 真理 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (00346404)
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Keywords | 国際法 / 域外適用 / 国際刑事法 / 保護主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、執行管轄権行使とそれに伴う一連の手続を一連のプロセスとして捉え、その各段階において管轄権行使を制約する要因を丹念に抽出することである。 研究初年度に当たる本年は、いくつかのケーススタディを並行して行い、今後の理論的研究の基盤を整えることに専念した。 第1に、消極的属人主義に基づく執行管轄権行使に当たっての制約要因を明らかにするために、日本国刑法3条の2の起草過程・実際の実行について分析した。その結果、起草過程においては、領域国の主権の尊重のために立法管轄権レベルでの制約要因とされてきた双罰性原則については、個人の生命・身体の保護という観点から相対化され、執行管轄権行使レベルでの違法性の意識の問題として再構成が可能であると考えられていたことを明らかにしたうえで、立法による手当が一切不要であるかについては留保が必要であることなどについて考察を深めた。また、被疑者の所在地(他国領域内、船舶上、航空機上)に応じた逮捕権の発動時期・態様についても整理した。すでに研究会での口頭報告を行っており、その成果の一部は23年度に公表の予定である。 第2に、保護主義に基づく執行管轄権行使に当たっての制約要因を明らかにするために、特に犯罪人引渡しの際に考慮されうる要因の検討に着手した。成果の一部は、竹内真理「域外適用法理における保護主義の成立基盤」(研究成果の図書欄を参照)として公表した。 第3に、補足的な検討として、海洋環境条約制度における、公海上での違法な汚染の排出に対する寄港国の「普遍管轄権」について分析した。海洋環境という国際公益の保護を確保するための執行制度の下で、寄港国の執行管轄権行使にあたって旗国の管轄権がいかなる制約要因となりうるかについて考察を深めた。成果の一部は、竹内真理「海洋環境関連条約」『テキスト国際環境法』(研究成果の図書欄を参照)として公表した。
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