2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22730041
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
竹内 真理 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (00346404)
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Keywords | 国際法 / 管轄権 / 域外適用 / 普遍主義 |
Research Abstract |
本研究の目的は、執行管轄権行使とそれに伴う一連の手続を一連のプロセスとして捉え、その各段階において管轄権行使を制約する要因を丹念に抽出することである。 研究次年度に当たる本年は、普遍主義を中心に、理論的考察を深めることに専念した。 第1に、受動的属人主義に基づく執行管轄権行使に当たっての制約要因を明らかにするために、日本国刑法3条の2の起草過程について分析したものを英語の資料として公表した。起草過程においては、領域国の主権の尊重のために立法管轄権レベルでの制約要因とされてきた双罰性原則については、個人の生命・身体の保護という観点から相対化され、執行管轄権行使レベルでの違法性の意識の問題として再構成が可能であると考えられていたことを明らかにしたうえで、立法による手当が一切不要であるかについては留保が必要であることなどについて考察を深めた。 第2に、普遍主義に関する執行管轄権行使について、重大な人権侵害分野に関する総論的な考察を行い、その成果を公表した。普遍管轄権の基盤は不処罰の遺漏という国際政策と国内的な利益との交錯の上に成り立っていること、しかしながら実際の行使に当たっては領域国・被疑者の国籍国との利益衝突が生じうるのであり、それを調整する原理として、処罰義務概念が有用であることを示唆した。この考察を踏まえて、さらに、領域国と普遍管轄権行使国との衝突のあり方をより動態的な観点から検討した英文でのペーパー(Universal Jurisdiction in a Context-From Dialectic to Dialogue)を執筆し、現在公表先を検討中である。 第3に、域外管轄権に関するリーディングケースであるローチュス号事件の判例評釈を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
管轄権の行使条件について、複数の分野に渡って考察を深めることができ、かつ英語での執筆も並行して進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き管轄権の実際の行使条件について、とりわけ処罰義務概念という観点からの再構成を視野に入れて考察を深めるとともに、英語での執筆を進める予定である。
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