2010 Fiscal Year Annual Research Report
国際法上の国家免除における慣習国際法と国連国家免除条約との関係
Project/Area Number |
22730042
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
坂巻 静佳 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (10571028)
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Keywords | 国際法学 / 国家免除 / 裁判権免除 / 国連国家免除条約 / 国家免除法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「国および国の財産の裁判権免除に関する国際連合条約」(以下、国連国家免除条約)と慣習国際法との関係を明らかにすることにある。本年度は基礎となる文献および資料の収集を進めるとともに、主として不動産事案について3つの側面から検討した。 第1に、不動産事案について規定する国連国家免除条約13条(a)に関し、免除が否定される根拠およびその射程を明らかにするべく、起草過程やコメンタリー等を検討した。 第2に、国連国家免除条約13条(a)に対応する「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」11条1項について、免除が否定される射程を画定するために起草過程等を調査した。 第3に、不動産事案に関する国家実行上の国家免除の判断基準、国家免除の射程および国家免除が認められる根拠または否定される根拠を解き明かすために、国内判例、国内法および条約等を検討した。 以上の検討の結果、(1)国連国家免除条約13条(a)は、不動産に係る裁判手続から外国国家の裁判権免除が否定される根拠を所在地国法の適用の優越および不動産所在地の排他的裁判権にあるとして、免除を広く否定する規定ぶりを採用したが、商業的取引例外を定めた同条約10条1項との境界および関係性は必ずしも明確ではないこと、(2)絶対免除主義にもとづき、領土主権および不動産所在地国の専属的裁判権を根拠に一定の不動産事案に対し国家免除を否定する国家実行は確かに存在しているが、(3)制限免除主義にもとづく国家実行においては、不動産事案についてもしばしば主権的行為か業務管理的行為かを基準に免除が判断されてきたことが明らかとなった。
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