2011 Fiscal Year Annual Research Report
医療事故と社会保障―産科医療補償制度と社会保障法制の交錯に関する法的分析
Project/Area Number |
22730050
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Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
原田 啓一郎 駒澤大学, 法学部, 准教授 (40348892)
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Keywords | 社会保障法 / 産科医療補償 / ONIAM |
Research Abstract |
研究最終年度である平成23年度は、フランスの医療事故賠償・補償制度(ONIAM)に関する医療法及び社会保障法の分析を通じて、わが国の産科医療補償制度の理論的及び立法論的検討を行った。 フランスでは、患者の権利及び医療制度の質に関する2002年3月4日の法律により、重篤かつ例外的な医療事故の被害回復を図るために、国民連帯により被害の補償を図る医療事故無過失補償制度としてONIAMを創設した。これにより、医療事故による重篤な被害、過失のない事故については、その被害の大きさとリスクの普遍性ゆえに社会的リスクとして制度的に認識され、その被害は社会的に補償されることとなった。 ONIAMでは、重篤かつ例外的な医療事故を生じせしめる治療に内在するリスクを社会的リスクとしてとらえ、医療保険財源をその補償財源に充てている。この点において、疾病治癒のための医療(費)の保障に加え、治療に内在するリスクの補償に関する財源的引受けという、医療保険の位置付けの広がりをみることが可能である。 以上の分析を手がかりにわが国の産科医療補償制度をみると、同制度は、自然分娩の緊急時など療養の給付が行われる可能性のある医療行為に内在するリスクの具体化に備えるために、そのリスクに接する可能性のある患者及び被害者になりうる被保険者全体が拠出した保険料を原資とする医療保険財源を通じて、補償制度を支えているとみることができ、これを患者となりうる被保険者全体の連帯の現れとしてみることができるといえる。本研究を通じて、自由診療である出産時の事故の補償をこえて、保険診療に内在する治療の危険の具体化に備えるために、医療保険の保険財源の一部を拠出し、補償制度の支え手の一部となる方向性があることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)