2011 Fiscal Year Annual Research Report
就労支援の観点に基づく我が国の社会貢献活動発展の諸条件に関する実証的研究
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22730060
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Research Institution | Tokiwa University |
Principal Investigator |
千手 正治 常磐大学, 人間科学部, 准教授 (00406018)
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Keywords | community work / 社会奉仕命令 / 社会貢献活動 / 就労支援 / 社会参加活動 / 社会奉仕活動 / 犯罪者処遇 / 社会復帰 |
Research Abstract |
今年度は、ニュージーランドにおける社会内労働を通じた対象者の就労を中心とした研究に従事した。 本研究では、(1)社会内労働の目的の1つとして実用的なスキルを習得もしくは行使する機会を得ることが挙げられており、また施設内処遇の現場でも受刑者を対象とした職を得るための技術及び機会を与えるためのプログラムが実施されるなど、ニュージーランドにおいても犯罪者処遇における就労支援の重要性が認識されており、その背景には再犯防止もあると思われること、(2)社会内労働の運用についてに、プロベーション・サービスの職員による直接監視の下で行われる場合と、代理人に委託される場合の2通りが存在するが、社会内労働を通じた就労の成功例の大部分は後者であること(ただしこの場合でも、就労に至った例は全体の10%から15%程度)、'(3)対象者の就労の成功要因として、1)情熱、2)やる気、3)関心、4)年齢、5)罪種、6)再犯等のリスク、7)基礎的な生活スキル等が考えられること、(4)対寒者が就労に至るための条件として、プロベーション・オフィサーが対象者の経験・知識・特技等を正確に見極めた上で社会内労働の作業内容を決定すること、及び対象者の経験・知識・特技等を出来る限り活かせるための多種多様な代理人の確保が考えられること(このための方策として、社会内労働代理人基金と呼ばれる制度がある)、(5)代理人による対象者の受入は、トライアル雇用としての側面があること等を見出し、ニュージーランドにおける社会内労働を通じた就労の状況について調査できたことが今年度における研究の意義であると考える。 これらの点は、我が国の就労支援における課題等と相通じるものがあり、また我が国における社会貢献活動発展の条件を考察する上で示唆に富むものと思われる。本研究の重要性は、これらの点を見出し、就労支援の観点から社会貢献活動を考察するための土台作りを行ったことにあると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度においては、ニュージーラシドにおける社会内労働を通じた対象者の就労支援の状況を中心に研究を進める予定であったが、これについてプロベーション・オフィサーに直接面会し、当該状況についてインタビューする機会を得ることができ、社会内労働の現場を見学することもできたため。また我が国における社会貢献活動の動向等についても、刑法学会における報告ならびに水戸保護観察所の保護観察官等より情報を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度においては、(1)23年度のニュージーランドにおける調査終了後に生じた疑問点等(代理人の登録資格、代理人側の意識・対象者のやる気等を継続させるための措置等)について調査し、併せてニュージーランドを中心とした諸外国における社会内労働類似の制度を通じた対象者の就労に関する文献・資料等を引き続き収集し、社会内労働を通じた対象者の就労を促進させるための条件について一定の結論を出すこと、(2)我が国における犯罪者等に対する就労支援を促進するための条件について再度検討すること、(3)我が国における社会貢献活動の動向等について引き続き調査し、これに(1)及び(2)を踏まえた上で、社会貢献活動に就労支援の要素を加味するための条件について考察し、最後に3年間の研究成果として纏めることを考えている。
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Research Products
(1 results)