2010 Fiscal Year Annual Research Report
「刑事責任拡散」の時代における、刑法のありかた~経済犯罪を中心に
Project/Area Number |
22730061
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
島田 聡一郎 上智大学, 法学都, 教授 (90282540)
|
Keywords | 背任罪 / 処罰の早期化 / 制裁の多様化 / 保護法益 |
Research Abstract |
2010年度は、研究の基盤となる知見を得ることを目的とした。日本語文献については、重要な基本的文献をできるだけ漏れがないように、購入した。また、比較法的見地から、日本刑法典のモデルとなった法典を持つ、ドイツに出張し、そこにおいて、基本的な文献の収集に努めるとともに、ドイツにおける有力な刑法学者から、日本の現状について、コメントを求めた。さらに、そこでは、いわゆるリーマンショック後における銀行家に対する刑事責任の追及のあり方についても、貴重な示唆をえた。こうした経験を通じて、経済犯罪に対して、訴追が積極的になされるようになってきた現在、どのような行為を処罰すべきであり、どのような行為を、許された取引行為と評価すべきか、という経済刑法における根本的問題について、重要な示唆を得た。 また、3月には、ドイツにおいて、経済刑法に関する議論をリードし、ドイツを代表する学者である、Bernd Schuenemann(ミュンヘン大学教授)を招聘し、東京、京都、大阪で講演をしていただいた(その邦訳は、早稲田大学比較法研究、刑事法ジャーナルといった専門誌に掲載予定である)。 こうした成果をふまえ、植村立郎判事退官記念論文集に「背任罪における任務違背行為」を執筆した。すでに、原稿は提出しており、本年7月に刊行予定である。
|