2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730078
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡本 裕樹 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (90372523)
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Keywords | 複合契約 / 契約の目的 / 契約の拘束力 / 継続的契約 / 委任 / 組合 |
Research Abstract |
本年度はまず、いわゆる複合契約論の中で、経済的にみて一体的に機能する複数契約を、法的にも一体的に処理する方向での検討に際して、多くの論者が着目する取引全体の「目的」ないしは類似の概念に、いかなる法的意義が付託されようとしてきたのかについて、整理と分析を試みた。複合契約論が一時期の活況を失ったのは、いくつかの理由が考えられるが、その理由の一つとして、各論者がそれぞれの学問的知見・立場から、伝統的契約理論では把握しきれない取引現象について、新たな理論枠組を提示しようとしたことにより、結果として、議論の内実が錯綜し、見通しの悪いものになったことが挙げられる。そのため、更なる議論の展開には、これまでの議論を整理し、その理論的意義を確認することが、必要と考えられる。この成果の発表は、来年度の最優先事項である。 次に、日本の伝統的な契約理論において、契約の拘束力を根拠付ける際に「目的」が機能している場面がないかについて、分析を進めている。伝統的には、主として、1回的な財の相互移転により終了する双務契約が念頭に置かれて、理論が構築されてきた。そこでは、財の交換こそが契約の「目的」ということもでき、財の交換の範疇を超える契約の「目的」を論じる意味は大きくなかった。しかし、継続的契約関係に目を向ければ、当事者間の財の交換とは異なる契約の「目的」が、契約の拘束力に対して重大な影響を与える類型も見られる。そのモデルとして、典型契約中の委任と組合をとりあげ、これらの契約において、契約締結と契約内容を巡り、そうした「目的」がどのような理論的意義を有しているのかを、探っていきたい。
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Research Products
(3 results)