2010 Fiscal Year Annual Research Report
合同行為・定款と契約・約款―法律関係の解消に着目した対比―
Project/Area Number |
22730079
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西内 康人 京都大学, 法学研究科, 准教授 (40437182)
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Keywords | 合同行為 / 定款 / 無効 / 取消 |
Research Abstract |
合同行為や定款の特殊性を明らかにするという目的のために、主としてドイツ法の議論を参照しつつ、無効や取消の場面での約款や契約と対比させて検討を行なった。その結果、合同行為や定款については、ドグマ上、次の二つの流れでの契約論の修正に関する議論が析出された。すなわち、一方で、要件レベルでの契約からの解離を指向する立場が存在する(古典理論として、契約を不要だとする事実上の会社理論。また、最近では少なくとも契約一般とは異なる成立要件を定立する事業法論)。他方で、無効・取消の効果排除を目指す立場がある(権利外観、無効・取消規範の修正、組織契約の特殊性)。また、これらのような修正が顕在化する時点として、会社契約締結時、組織具備時、対外行為開始時、登記時といった様々な立場が主張されていることが判明した。こうした時点の違いと関連して、合同行為や定款の実質的な特殊性を何に求めるかの差に関して議論が、行なわれていた。つまり、まず、権利能力を前提要件とするかについて、立場が分かれている。判例は権利能力の有無を重視していないが、最近の学説は他の継続的法律関係と区別すべきだとして、一般にこれに反対している。しかし、学説の内部でも、権利能力の発生根拠を何に求めるかについて、争いが存在する。 こうした議論は、いまだ論文としてまとめられていない。しかし、この知見を基礎にして、学校法人理事会決議における無効規範の適用可能性が争われた最高裁判例を分析し、評釈した。このように、団体における法律行為と無効・取消規範の関係考察は、単なる学理的意味のみならず、とりわけ詳細な規定が欠ける種々の中間法人における紛争事例の解決規範を発見する上で、役立つものであると考える。
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