2010 Fiscal Year Annual Research Report
不当条項規制に関する個別訴訟と団体訴訟の横断的考察
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22730081
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
武田 直大 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (80512970)
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Keywords | 民事法学 / 民法 / 契約 / 不当条項規制 |
Research Abstract |
不当条項規制効果論においては、一部が違法な条項が全部無効となるべきなのか、それとも一部無効にとどまるべきなのかという問題が議論されている。しかしながら、この問題の前提には、そもそも何をもって一つの条項と見るべきなのかという問題が存在する。この問題については、従来、ほとんど検討がなされてこなかった。そこで、これまでも我が国において比較法の対象とされてきたドイツ約款法における議論を参考にして、この問題についての検討を行った。その際に、具体的な契約にかわる個別訴訟と、違法な条項の差止を目的する団体訴訟とにおいて、別個の考慮が必要ではないかとの視点から、それぞれの訴訟形態について、別に考察を加えた。その結果、次のような結論に達した。 個別訴訟において、個別の規制対象となる条項を画定することは、違法性評価の対象となっている部分とそうでない部分とを区別することを意味する。これにより,評価の対象となっていない部分が無効範囲から除かれる。このような機能は、「およそ法的評価の対象になっていないものの効力は否定しえない」との思想によって基礎づけられる。そして、このような基本思想からすると、条項画定の基準としては、「具体的な規制規範に照らして、何が違法性評価を基礎づけているか」という定式を挙げることができる。 これに対して、団体訴訟においては、条項差止めの実効性を確保することが重要となる。ドイツにおいては、現に使用された約款だけでなく、それと同内容の約款についても差止範囲に含まれる。よって、なるべく違法部分を精確に特定した方が、差止範囲が拡大され、差止制度の実効性を確保することにつながる。このことから、団体訴訟においては、個別訴訟以上に、規制対象を精確に特定することが要請される。
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