2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730089
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
坂口 甲 神戸市外国語大学, 外国語学部, 講師 (20508402)
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Keywords | 受領遅滞 / 債権者の協力義務 / 債務不履行 / CISG |
Research Abstract |
1.具体的内容 両契約当事者の双方の事情により債務者の債務不履行が生じた場合に、そもそもまたいかなる範囲で各当事者が責任を負うのかが問題となる。CISG80条をめぐる議論から得られる中間結論は、以下のとおりである。前提として、CISG80条は、債権者の行為によって債務者の不履行が惹起された場合に、債権者の救済手段を排除する。80条による免責は、障害を惹起した事情が79条の免責事由にあたる場合であっても認められる。この場合に、債権者がそこから生じる不利益を甘受しなければならない理由は、債権者による障害を克服することが債務者に期待できないことのほか、不履行が債権者の危険領域に帰責されるとする見解、債務者の履行を一部または全部不能にさせてはならないオプリーゲンハイト(Obliegenheit)に債権者が違反したからであるとする見解などがみられる。両当事者惹起事例においても、80条を適用して解決するのが多数説である。困難な問題を生じさせるのが、債権者の履行請求権と契約解消権といった分割できない救済手段である。多数説は、債権者の惹起寄与割合が債務者のそれを明確に上回る場合にのみ、それらの救済手段を債権者に認める。これに対して、債権者による金銭的な補償と引き換えに債権者に履行請求権や解消権の行使を原則的に認める異論が有力に主張されている。もっとも、この金銭的な補償を解釈論上いかにして導き出すのかという難問が残る。 2.意義と今後の課題 CISG80条による免責および両当事者惹起事例における法的処理のあり方は、いずれもこれまで十分に研究されてこなかった問題領域である。本研究は、その問題領域を扱う点において意義がある。今後の課題としては、債権者による債務者の不履行惹起に関するCISGの規律群を横断的に考察する必要があると考えている。
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